スペインのプロサッカーリーグ=ラ・リーガ2部(セグンダ・ディビシオン)が、かつてない盛り上がりを見せている。なんといっても、2019年に日本人選手が3人、立て続けにこのリーグに参戦したのだ。柴崎岳が、デポルティーボ・ラ・コルーニャと契約したのを皮切りに、香川真司(神戸市垂水区出身)がレアル・サラゴサに、岡崎慎司(宝塚市出身)がSDウエスカに加入。特に、香川と岡崎は、同じアラゴン自治州にある、サラゴサ県とウエスカ県、隣り合う県のクラブでしのぎを削っているのだ。
香川が所属する、レアル・サラゴサのマーケティング担当者、カルロス・マルティネスさんが来日し、クラブに、日本人選手がもたらす好影響、そしてアラゴンや、サラゴサの魅力について語った。
ここで、アラゴン自治州について簡単に紹介する。アラゴンは、イベリア半島の北東部に位置。北から順に、ウエスカ県、サラゴサ県、テルエル県の3つがあり、約5万㎢に、130万人が暮らしている。北部のウエスカ県にはピレネー山脈が連なり、中部のサラゴサ県にはエブロ川が流れ、南部テルエル県には、イベリコ山系が広がる。こうした地理的な好条件により、アラゴンは、古くから交通の要衝として発展してきた。標高3,000m級の峰々、砂漠、豊かな平原、深い森、切り立った岩山、雄大な渓谷に加え、荘厳なロマネスク様式や、あわせて13の美しい村々……。変化に富む景観が魅力だ。
そして、食文化も外すことができない。寒暖差の大きい畑で、ぶどうがたくましく育つ。つまり、ワインが美味しい。豊かな牧草を食べて育った仔羊(ラム)、太陽をたくさん浴びた果物、乾燥した土地で熟成された生ハムなど、大地の恵みを堪能できる。
そんな、アラゴン・サラゴサのサッカークラブ、レアル・サラゴサで、背番号23をまとい、香川が奮闘している。レアル・サラゴサは、87年の歴史を持つ名門クラブだ。かつては、現在はヴィッセル神戸でプレーする元スペイン代表FWダビド・ビジャも在籍した。このレアル・サラゴサに、今年8月、香川が加入。入団イベントには、ファン7,000人が集まり、カルロス氏は、「スペインでは休暇の時期にあたり、こんなに集まった経験は過去にない。異例中の異例だ」と話す。スタジアムを訪れる日本人の数が増えただけでなく、2か月の間に1,000枚超の“KAGAWA”ユニフォームが売れ、大阪府に住むのファンが、年間シートを購入した例もあるという。
こうした動きを受けて、クラブが動いた。今年11月から日本に向けてオンラインチケットの販売を始め、日本人向けのプレミアムシートの導入や日本語ガイドの対応、スタジアムツアーの実施や、エスコートキッズの募集など、多くの特典を設け、日本からのツアー客を優遇する。今後は、日本の旅行会社がアラゴンへのツアーを企画する可能性も大いにあり、注目だ。
一方、SDウエスカに入った岡崎は、スペイン観光局の公式映像で、「経験したことのない歓迎を受けた」と語っている。100年以上の歴史を誇るクラブだが、2018-2019シーズンに初めて1部リーグに昇格。1シーズンで降格したが、彼は、再昇格を切望するクラブの救世主となれるか。岡崎は、「自然もありながら、ほかのどの国とも違うスペインの街並みを、歩いて1~2時間で見られる」と、ウエスカの街に魅せられたようだ。「クラブの1部リーグ復帰、日本代表への復帰も、僕はあきらめていない」と力を込めた。
今後も、“2人のシンジ”、そして、スペイン、アラゴンの地から、目が離せない。