周防正行監督5年ぶりの最新作『カツベン!』 活動写真弁士・大森くみこがインタビュー【前編】

『Shall We ダンス?』をはじめ数々の名作映画を世に送り出し、このたび5年ぶりの新作として、活動写真弁士をテーマにした映画『カツベン!』(12月13日全国ロードショー)でメガホンをとった映画監督の周防正行さん。7月25日に放送されたラジオ関西『Playlist of Harborland』でのインタビューの模様をお届けします。その聞き手となったのは、同番組木曜日パーソナリティーであり、活動写真弁士としても活躍する大森くみこ。活弁を体現する大森が、周防監督の映画『カツベン!』にかける思いを引き出しました。そのインタビューをほぼノーカットで収録。こちらでは前編をお送りします。

周防正行監督(写真:ラジオ関西)
周防正行監督(写真:ラジオ関西)

大森くみこ(以下、大森) 周防監督、神戸にようこそ! 神戸の街はいかがでしょうか。

周防正行(以下、周防) 横浜となんとなく(似ている)。港町だし、外国の文化も入ってきていたし、神戸は神港倶楽部というところで、明治29年、1896年、キネトスコープの上映があった街ですもんね!

大森 そうです! 映画の街ということで、その地に来ていただきとってもうれしいなと思っています。さて、12月13日に『カツベン!』が公開となりますが、活動写真弁士が主人公ということで、どんなお話になっているか、簡単に教えていただけますか。

周防 当時、サイレント映画で、映画に音がなかった時代、日本ではスクリーンの横に人が立って、映画を説明しながら見せていました。活動弁士という職業があったんです。その活動写真を見ていて、活動弁士に憧れた少年(俊太郎=成田凌)が、どうやって活動弁士になっていくか、そういう青春群像劇です。そのなかには、当時、まだ日本で活動写真が撮られ始めたころは、女優さんではなく、歌舞伎の流れかと思いますが、女の人の役は女形と言われていて、男の人が演じていた。俊太郎という(主役の)青年とは違って、女優になりたいと思っている女の子が映画のヒロイン(黒島結菜)。その2人の青春群像劇というのが、この映画のあらすじ。恋あり、笑いあり、活劇あり、盛りだくさんの、昔の活動写真のような構成になっています。

大森 そもそも、なぜ活弁の映画を撮ろうと思われたのですか

周防 もともとはずっと僕の映画で助監督をしてくれている片島章三さんという人が、彼の話でいうと20年来の企画だったらしくて。数年前に彼から映画のシナリオを書いたので読んでみてくれないかということで、見せてくれたのが、『カツベン!』という映画のシナリオ。それを読んだとき、面白いと。本当に素直にね、観客として、「これ面白いよ、絶対に映画にしたほうがいいよ」と話をしたら、それを聞いてたプロデューサーが、「だったら監督、映画を撮りませんか」と言ってくれたんです。だから、「えっ、撮らせてもらえるのなら、撮りたい」ということで始まったのです。そのシナリオを読んで面白いと思ったことはたくさんあるのですが、振り返ってこういう場所でいうべきことは、活動弁士という、映画のスクリーンの横に人間が立って内容を説明しながら見せるというこのやり方、上映方式が、日本独特のもので、アメリカでもヨーロッパでもそういう映画の見せ方をしていなかったことが大きいということ。そこに、なんで日本だけこういう見せ方が定着したのかというところに、日本文化の秘密というのがあるような気がしましたし、この映画全体が昔、活動写真が持っていたエネルギーに満ち溢れている、そういうシナリオだったんです。それを再現してみたい、表現してみたいというのが、強くありました。

大森 私も試写で拝見させていただきました。当時のエネルギッシュな感じが画面からあふれてくるような気がして、本当に楽しかったです! そのなかで、当時の雰囲気が実に細かいところまで再現されていてびっくりしました。私は大正時代にタイムトリップするのがひとつの夢なのですが、まるで夢が叶ったみたいな感じがして、素晴らしいと思いました。再現するにあたってのこだわりや、大変だったところはありましたか。

周防 まず、活弁のシーンが、本当に当時の人が楽しんでいたであろう、そういうリアリティにあふれているようにしなければいけなかった。「おっ、すごいな」、「このしゃべりとか、これだったら楽しいよね」と。とにかく、活動弁士のしゃべりには一番こだわったところです。これは成田さんに本当に一生懸命稽古していただきました。(活動写真弁士として活躍中の)坂本頼光さんにぴったりついてもらって、クランクイン2か月前からやってもらったんです。役者以外のところでいうと、大正時代の景色、情景をとるのが一番大変でした。要するに、今の街のなかで再現するわけですから。たとえば、シナリオに「街を走り抜ける自動車」と書いてあったら、そういう絵を取らなければいけないのですが、まずは(現代は)道路がアスファルトですし、地べたの、土の地面の街なんて、どこにもない。だから、映画館の街なみは、京都の太秦・東映の撮影所で、オープンセットで、映画館の表側だけを作って撮りました。中は、実際に(情景が)ある場所を探したのですが、福島県に移築されていた、明治時代に建てられた芝居小屋というのがあったんです。外側は整備されているので(撮影として)使えないが、中だけなら使えるので。そこは明治時代にできて、後に映画館にかわった劇場。そのリアリティのところですよね、柱とかそういうものが醸し出す空気感とかでできました。ただ、追っかけのシーンとか、オープン(野外撮影)がいっぱいあるんですよ。日本全国、「ここだったら大正時代を撮れます」という場所を探すのは大変でした。

大森 そうだったんですね。あと、細かい映写のシーンなど、いろんな本で読んでいたものが、(当時の様子が)目の前で再現されていて、「わあ、すごい!」と、すごく感動しました。

周防 映写機を探すところでも、要するに手回しの映写機、手回しのですよ! まだ(当時は)モーターがないので、人間が手で一定のスピードで回す。これは撮影用のカメラもそうだったんです。カメラマンの特殊技能として、一定の速度でフィルムを回せるかどうかというような、回す練習をしていたらしいですから、当時のカメラマンは。そういうところを実際の映像で見せたくて、そこは美術部が本当に苦労して映写機を探し、なんとか撮影に使えたということです。

『カツベン!』12月13日(金)全国公開 ©2019 「カツベン!」製作委員会
『カツベン!』12月13日(金)全国公開 ©2019 「カツベン!」製作委員会

映画『カツベン!』(2019年12月13日全国ロードショー)
監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊
脚本・監督補:片島章三
製作:「カツベン!」製作委員会
企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
配給:東映
ホームページ:http://www.katsuben.jp/
Twitter:https://twitter.com/suofilm
Instagram:https://www.instagram.com/katsuben1213/

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