周防正行監督5年ぶりの最新作『カツベン!』 活動写真弁士・大森くみこがインタビュー【後編】

『Shall We ダンス?』をはじめ数々の名作映画を世に送り出し、このたび5年ぶりの新作として、活動写真弁士をテーマにした映画『カツベン!』(12月13日全国ロードショー)でメガホンをとった映画監督の周防正行さん。このたび、ラジオ関西『Playlist of Harborland』7月25日放送分でインタビューに応じた模様を収録。その聞き手となったのは、木曜日パーソナリティーであり、活動写真弁士としても活躍する大森くみこ。インタビューでは、活弁を体現する大森が、周防監督の映画『カツベン!』にかける思いを引き出しました。そのインタビュー後編を掲載します。

周防正行監督(写真:ラジオ関西)
周防正行監督(写真:ラジオ関西)

大森くみこ(以下、大森) (映画のなかでは)細かいところが本当にツボで、感激しながら拝見させていただきました! あと弁士役をされた主演の成田凌さんですが、主演抜擢の決め手は?

周防正行(以下、周防) たくさんの若い俳優さんに会って、それで成田さんにしたのですが、好きになれるかどうかは個人の趣味の問題で、成田さんは好きなタイプの若者という範疇、それは大きかったです。ただ、いい意味で裏切られたのは、(主演に)決めたときには、クールな二枚目方面の若者だろうと、勝手に思いこんでいたんですが、実は三枚目的な要素がいっぱいあって、そのキャラクターが坂本頼光さんの活弁のイメージとぴったり合った。やんちゃで(笑)。

大森 (笑)。頼光さんも『ザ・芸人さん』という感じですよね!

周防 半分お笑いに足を突っ込んでいる人ですからね。そういうやんちゃなことを表現できる元々の性質が成田さんにあったのはすごいラッキーでした。そのわりにお茶目でかわいい感じなんです。

大森 コメディっぽいシーンとかすごくハマってらっしゃいました。

周防 あの憎めない感じが成田さんはよかったですね。

大森 あと、弁士役として、高良健吾さん、永瀬正敏さんも出ていますが、弁士のモデルはありましたか。

周防 ありました。劇中でも徳川夢声さんの話が出るのですが、永瀬さんの母体になるのは徳川夢声さん。飲んだくれているとか、普通の弁士と違って、歌い上げるというよりはボソッというところとか。ただ、ほかの人は特定の個人というのはあまりないです。当時のいろんな弁士さんのプロフィールとかを見て、〇〇タイプというのは、(いろんな弁士さんの)いいところどりをしたというか。大雑把にいうと、高良さんはいわゆるこてこてのオーソドックスな活動弁士をイメージしました。成田さんはさっき言ったように、どっちかというとやんちゃな感じというか、ウケるためになんでもやるみたいなタイプにしました。

周防正行監督と大森くみこの『活弁トーク』は大いに盛り上がった(写真:ラジオ関西)
周防正行監督と大森くみこの『活弁トーク』は大いに盛り上がった(写真:ラジオ関西)

大森 それぞれすごく個性があるなと思いました。私は現代で弁士をやっているので、現代弁士に何かもし思われることがありましたら教えてください。

周防 僕がシナリオを読んだあとにすぐ、いろんな活動弁士さんの上映会に行ったのですが、明らかに当時と違うと思ったのは、歴史。活動弁士の歴史ではなく、映画の歴史です。当時の活動弁士の皆さんは、映画の未来について、それほど具体的なイメージはなかった。今、目の前にある動く写真、それは自分の語りの素材であるというのがたぶん強かったと思います。ただ、今、弁士をやるということは、映画が100年以上の歴史のなかで、ひとつの芸術作品として確立して、尊重しなければいけないことが絶対にあるはず。要するに、一本の作品が持っているテーマや味わいというのを、弁士の言葉によって壊してはいけないという思いがたぶん強くある。本当に今の弁士は控え目というか、謙虚なしゃべりだなという印象がありました。たぶん、大正時代に行ったら、もっとめちゃくちゃにやっただろうなと。この作品は「この監督のものではなく、自分のものだ」と。自分のしゃべりの素材だからと、好き勝手にいろんなことが言えた。現代の弁士さんは、そういう意味で、映画の価値がある程度確立されたところでしゃべるから、ものすごく大変だろうと思います。むしろ、大正時代に行ったら、今、ご自分が語っている語りとまったく違う、もっと自由奔放なめちゃくちゃな語りができたはずだと思います。

大森 あの映画を見て、私ももうちょっと個性的に行きたいなと思いました。

周防 ある程度やってもいいのかなという気がするんです。活動弁士がどういう存在か認知されれば、それぞれの弁士のしゃべりを楽しむという文化が生まれると思うんです。今、見に行っているほうも、活動弁士付き上映会で映画を見に行っている。当時の観客は映画を見に行っていたわけではなく、半分、弁士の語りを聞きに行っていたんです。映像文化だったにもかかわらず、日本の観客は語りとして映画をとらえていた部分がものすごく大きかった。そういうものだったんだという認識が今の観客にあったら、映画は映画として、弁士付き上映として楽しめると思うんです。そういう意味では、弁士が変わるというより、まず、受け止める側の観客が、きちんと映画的な経緯を、映画史をちょっと分かってくれれば、もっともっと今の活動弁士さんは自由に、「こんな見方もできます」という形のしゃべりもできるんじゃないかなと思います。

大森 そのためにも、多くの方に、この映画『カツベン!』を見ていただきたいと思います。最後に監督からリスナーの方にメッセージをお願いします。

周防 この映画は活動弁士について、活動弁士というのは何か、活弁の楽しさというのはもちろんわかる映画ですが、実は映画全体が昔の活動写真のテイストに満ち溢れたものにしようと思いました。笑いにしても、ドラマの展開にしても、アクションシーンの撮り方にしても、昔の活動写真を意識して作ったので、楽しい映画だといったとき、皆さんの楽しいと、少し次元の違う面白さがあるので、ぜひそこを楽しんでもらいたいなと思います。

映画『カツベン!』周防正行監督と、活動写真弁士として活躍中の大森くみこ(写真:ラジオ関西)
映画『カツベン!』周防正行監督と、活動写真弁士として活躍中の大森くみこ(写真:ラジオ関西)

●『Playlist of Harborland』木曜日
2019年7月25日放送回より、大森くみこの感想
「周防監督には、たっぷりと映画『カツベン!』のお話を聞かせてくださいました。まだまだ聞きたいことがたくさんありましたが、なにわともあれ、皆さんには映画を見ていただきたい。活弁の魅力が、当時の映画の魅力がギューッと詰まっていますし、活弁を知らない方が見ても、アクションあり、恋あり、笑いありと、いろんな要素が入ったノンストップエンターテインメントということで、楽しんでいただける作品になっていましたので。もう本当に楽しかった! 監督はとっても優しくて、気さくに話してくださいました。坂本頼光弁士という名前が出ておりましたが、(映画で)活弁指導に入られました関東の弁士さんです。先輩弁士の片岡一郎弁士も、演技指導や時代考証などで入っておられました。ぜひとも12月の公開を、今から楽しみにお待ちください!」

映画『カツベン!』(2019年12月13日全国ロードショー)
監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊
脚本・監督補:片島章三
製作:「カツベン!」製作委員会
企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ
配給:東映
ホームページ:http://www.katsuben.jp/
Twitter:https://twitter.com/suofilm
Instagram:https://www.instagram.com/katsuben1213/