千葉県成田市発、4人組ロックバンド”BOYS END SWING GIRL”が、メジャーセカンドアルバム『STAND ALONE』を2019年12月11日にリリース。すべての年齢層へ向けて「いつまでも色褪せない音楽を」届け続ける彼らが、”ボイエン”の音楽観やこれからを語った。(聞き手:ラジオ関西・春名優輝アナウンサー)
BOYS END SWING GIRLのバンド名の由来は? 「ナンバガ」、「ミッシェル」、「銀杏」......好きなバンドの組み合わせ!
――「ボイエン」と縮めたり、「BESG」と頭文字を取った略称でも親しまれていますが、オフィシャルの略称はありますか?
冨塚大地(以下、冨塚) なんでもいいんですけれども、一回「『ボイエン』で統一すっか!」という話は一応出ましたね。
――ではラジオ関西でも「ボイエン」と呼ばせてもらいますね! そもそも「BOYS END SWING GIRL」というバンド名の由来は?
冨塚 高校1年生のときにつけたバンド名なんですけれども、そのとき好きだったバンドが3つ。「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」と、「ナンバーガール」と、「銀杏BOYZ」の3つです。このバンド3つのすべての要素を織り込んだバンド名にしようと思って。まずは「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」の“長くて、4つの英単語”という要素を選びました。あとは、「銀杏BOYZ」の“BOYS” と「ナンバーガール」から “GIRL” を借りてきて。
――まだ、「BOYS AND GIRL」ですね。
冨塚 そう、でもまだ“長くて、4つの英単語”というミッシェルの要素が足りない。
――うん、そうですよね。
冨塚 最後は、映画『スウィングガールズ(2004) 』――「ジャズやるべ」のやつ――が好きだったので、“SWING”を借りてきました。そして、“AND”だと何だか分かりやす過ぎるから、“END” にしちゃえと。
――おぉ、「BOYS END SWING GIRL」の完成ですね。でも、結構、間違えられませんか?
冨塚 当時は「間違えるやつバカだな」くらいに思いたくて(笑)。馬鹿発見器のつもりで “END”にしていたんですけれども。今ではやっぱり間違えられすぎて、絶対に “AND” の方が良かったなと後悔しています(笑)。
――でもその表記に惹かれて、それがきっかけでリスナーになる人いるかもしれないですよ。
冨塚 そうですね。こういうバンド名をつける時点でひねくれ者の集まりなので、そういうつもりで聞いてほしいですね。「ただただポップで、真っすぐなだけではないんだよ」というのがバンド名に現れている気がしますね。
ボイエンの音楽性に迫る――メロディからでもなく、詩からでもなく、「テーマ」からつくる作品――
――先日リリースされた新譜「STAND ALONE」は、6曲入りのミニアルバム。どれも四番バッター、どの曲もメインディッシュというような1枚だなと思いました。この6曲にはどのようなこだわりが詰まっているのでしょうか?
冨塚 結構な曲数を書いたんですけれども、今回のアルバムのテーマは「孤独」になっています。6曲それぞれが六つの視点から見た孤独の歌なんですよ。「これは何の孤独なんだろう」、「この曲はどういう孤独なんだろう」と考えながら聞いていただけるとうれしいです。
――普段はどういったことを意識して曲作りをしていますか。
冨塚 自分の詩の情景描写を通して、聴いている人の頭の中にどんな映像を浮かべてもらえるかというのを一番に意識して作っています。
――小説を読むのに似ていますね。
冨塚 そうですね。僕は小説が大好きで大学も文学部だったんですけれども、その影響かもしれませんね。小説で一番いいなと思うのは、字を読んだときに頭の中に映像を思い浮かべることができること。それに似たことをしているのかもしれません。
――言葉を用いた芸術ということですね。
冨塚 日本語的な美しさもすごく意識しています。例えば、“ら抜き言葉”を使わないようにしていたり、季節を描写する言葉もなるべく歌詞に入れていったりするように気をつけています。これは万葉集を勉強していた影響ですね。
飯村昇平(以下、飯村) 僕もメンバーとして、(冨塚)大地が書く詩はいつも楽しみにしていますね。 今回で言ったら「孤独」をテーマに6曲ありますが、その詩の世界観を崩さず、一番楽曲が求めているアレンジ演奏を目指しています。ちょっとしたニュアンスを突き詰めて、その曲が一番輝く形を常に考えて演奏するようにしています。
――世界観や方向性みたいなものは、バンド内で共有されているものなのでしょうか?
白澤直人(以下、白澤) みんなで歌詞は見ますよね。「ここはこういうことを言っているから、ちょっと抑え目な弾き方にしよう」とか、そういう言葉で意見を共有して演奏していますね。
鍔本隼(以下、鍔本) 別の曲を聴いてそこから湧いたイメージを自分の中でストックして、反映させる、みたいなことはします。
――別の曲で?
飯村 わかりやすいですよ、結構。「この曲のこういうところ!」みたいなのを実際に聞かせてもらうと、抽象的な伝え方よりも全然わかりやすくてみんなのイメージが固まっていきます。
冨塚 それぞれ好きな音楽が違っていて、僕はJ-POPがすごい好きなんですけれども、ベースの白澤とギターの隼はオールディーなUKロックとかが好きで。僕が作るポップな曲調に「オールディーロックのこういうベースラインを入れたい!」とか、「ギターのこういうアルペジオを入れたい!」と、参考となる曲を具体的に出しながら議論していきます。一つの曲を作る時に、本当に世界中のいろんな曲の要素を集めて作っていて、それがゆくゆくは「BOYS END SING GIRL」の色になっていたらいいなと思っています。
――曲を作る際には曲からですか? それとも歌詞から?
冨塚 僕はそのどちらでもなく、“テーマが先”というのを提唱しています。詩でもなくメロディでもなく、まずはテーマ。たとえば今回のアルバムの4曲目の「スノウドロップ」だったら、冬に離れ離れになってしまった二人、というテーマです。「それに合うのはどんなコードかな?」と考えて、曲を組み立てていきました。これも小説を書くのに近いのかもしれませんね。
――3曲目の「毒を喰らわば」はサウンド的に新しいチャレンジが見えたような気がしまし た。これについてはいかがでしたか?
鍔本 これは白澤がアレンジしていて。
――そうなんですね。印象的な曲でした。
白澤 ありがとうございます。もともとは、いま収録されているものとは違ったアレンジ で。このアルバムを作るタイミングで「孤独」というテーマの世界観に合わせたアレンジに してほしいと冨塚から依頼をうけて、そのイメージに合わせてアレンジを作っていた感じです。
四半世紀のその先へ――BOYS END SWING GIRLのこれからは?
――大躍進中のボイエンの皆さんですが、これからの目標というか、それぞれの目指す将来について教えてください。
冨塚 いま26歳になったんですけれども、四半世紀というのは非常に大きな区切りだなと思います。今まではずっと「自分の歌」を歌ってきて、自分の人生や、自分を中心にした歌を歌っていました。でもこれからは、もう少し対象を広げて、世界のことや、社会のことについて歌ってみたいなと思いました。ひとつこのバンドですごくいいなと思っているのは、音楽性がいい意味で定まっていないということ。26歳なのにまだまだ可能性を探し続けてきて、いろんな所に手を出すし、やりたいと思ったら何でもやっちゃうし。でも、「ポップ」であることだけは忘れていないというバンド。そういうバンドはすごくいいなと思っています。
白澤 なんか、昔って何も考えてなかったなあと自分で思います。バンド活動にしても「自分が楽しければいいや」っていう感じでやっていたんですけれども。いまの年齢になっていろんなことを考えるようになりました。 演奏している時は、みんなの音ももっとしっかり聴こうという風に思えたし。そういうところをもっとアップグレードして音楽活動をしていければなと思っています。
鍔本 僕は音に関してなんですけれども。今はいろんなバンドがいると思いますが、ほとんどのバンドは全部良い音なんですよ。みんないい音だから、僕も良い音を出せばいいんですけれども、「ただ良い音じゃ意味がない」と最近、僕は思っていて。だから、僕が出す音の意味をすごく考えています。頑張ります。
飯村 僕はもうこれだな、というのがあるんですけれども「視野を広げる」です。本当に僕の課題なんですよ。ドラマーなので誰よりも視野が広くないといけないんですけれども、一番視野が狭いんです。普段している会話でもそうですし。
一同 (笑) 。
飯村 天然と言われるのも視野が狭いからじゃないかなと思います(笑)。音楽には人間力が如実に出るので、もちろん楽器のプレイヤーとして常に上を目指していくのは当然ですが、やっぱりそれよりも人間力を高める視野を広げたいです。
――それぞれ四者四様で、まだまだ “良い意味で”発展途上のボイエンの皆さんから興味深いお話をしていただきました。皆さん今回はありがとうございました。