やさしさとユーモア、日常の中の小さな喜びを表現 木版画家・浅野竹二のコレクション展「版を奏でる」

 庶民の暮らしを愛し、生きとし生けるものに温かいまなざしを注ぎ続けた木版画家・浅野竹二のコレクション展「浅野竹二 版を奏でる」が、伊丹市宮ノ前の伊丹市立美術館で開かれている。

「コレクション2 浅野竹二 版を奏でる」
「コレクション2 浅野竹二 版を奏でる」展示のようす

 浅野竹二は1900(明治33)年、京都に生まれた。30歳代で木版画と出会い、質素な仕事部屋で、ひとりで版を刻み続けた。生活のため、写実的な名所絵版画を制作していたが、作りたいものを作りたいという想いから、50歳になる年に初めて「自由版画」の個展を開催した。そして、その10年後に出会ったアメリカの画家ベン・シャーンから助言を受け、独自のスタイルを確立していった。

 伊丹市立美術館は、浅野の作品およそ400点を所蔵する。このうち、およそ130点で構成されたコレクション展では、50歳を過ぎても新しいものに取り組んでいく浅野のポジティブな姿勢を、作品を通してみることができる。1950年代の作品は、紙芝居や街頭での将棋といった当時の日常の暮らしが俯瞰で描かれているが、徐々に一つのものにクローズアップされ、モノトーンのコントラストを生かした作品に変わっていく。

左:「紙芝居」1950年 右:「眼を下さい」1965年
左:「紙芝居」1950年 右:「眼を下さい」1965年

 ベン・シャーンと出会った後は、より自由な表現を追い求め、簡潔でユーモアにあふれ、デフォルメされた形と明るい色で構成されるようになる。その一方で哀愁を感じられる作品も制作。また鳥や動物、丸などといったモチーフも多く登場するようになる。

 晩年、手足の衰えにより木版ではなく、グワッシュで描くようになるが、90歳代半ばを過ぎても毎日のように筆をとり、一日に何枚も描くことがあったという。浅野にとって「描くこと」が生きる術だったといえる。

 具象から抽象へ、作品の表現は変わっても、その根底には浅野自身のやさしさとユーモアが感じられ、日常の中の小さな喜びが表現され、その変遷が一目でわかるコレクション展になっている。

 伊丹市立美術館の学芸員は、「浅野自身が、楽器を演奏したり歌を歌ったりするように、作品作りに取り組んでいるようだ」として、コレクション展のタイトルを「版を奏でる」にした、という。

「コレクション2 浅野竹二 版を奏でる」は、伊丹市立美術館で3月1日(日)まで開催中。休館日は月曜日(2月24日は開館、翌25日は休館)。入場料は一般500円、大高生250円、中小100円。

「コレクション2 浅野竹二 版を奏でる」
「コレクション2 浅野竹二 版を奏でる」展示のようす