カンヌ国際映画祭監督週間、トロント国際映画祭、オースティンファンタスティック映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭、マカオ国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭……。30以上の映画祭から招待され、各国で熱いスタンディングオベーションを浴びた三池崇史監督の待望の最新作、映画『初恋』が、満を持して日本に凱旋。2月28日から公開されている。
欲望うずまく新宿・歌舞伎町。天涯孤独のプロボクサー・葛城レオ(演:窪田正孝)は類まれなるボクシングの才能を持ちながら、負けるはずのない格下相手との試合でまさかのKO負けを喫する。試合後に受けた診察で余命いくばくもない病に冒されていることを告げられた。
失意のどん底でさまようレオの目の前を、少女が駆け抜ける。「助けて」という言葉に反応し、とっさに追っ手の男をKO。が、倒した男はなんと刑事だった。レオは懐から落ちた警察手帳を手に取ると少女に腕をひかれ現場を後にする。「助けて」とつぶやいたその少女はモニカ(演:小西桜子)と名乗り、父親に借金を背負わされ、ヤクザの元から逃れられないことを明かす。
ヤクザと刑事の双方から追われる身となったレオは、一度はモニカを置いて去ろうとするが、親に見放され頼る者もいないモニカの境遇をひとごととは思えず、どうせ先の短い命ならばと、半ばヤケクソで彼女と行動をともにする。
数々の海外の映画賞を受賞した『初恋』だが、「むずかしいことはよくわからない」という人も遠慮せずに見て欲しい。ストーリーはすっきりしているし、それに何より、1度は名前や顔を目にしたことのある有名俳優がむき出しで役になりきっている姿も素晴らしい。「俳優さんで映画を選ぶ」というようなファンにもおすすめだ。
特に、ヤクザだが頭も切れるチョイ悪の染谷将太や、「彼氏を殺され復讐の鬼と化す女」という攻撃的な役をこなすベッキーには度肝を抜かれること間違いないだろう。また映画公式サイトには、辛酸なめ子や町山智浩、宇野維正などの映画に精通している著名人50人の感想が掲載されている。映画を見る前や見た後にサイトで感想を読むのも楽しいはず。
ヤクザモノであり、サスペンスであり、ボーイミーツガールな甘酸っぱい要素もあり……。どのシーンも美しく、どのキャラクターも魅力的に描かれた映画である。どんな角度から見ても楽しめる芸術性の高いエンタメ作品だ。きっとどんな人にも刺さる映画。日本のエンタメ業界は世界に誇れる存在なのだという勇気をもらえる。