桜の季節が駆け足でやってきた。ソメイヨシノの開花を待つ名城を兵庫五国から1つずつ取り上げて花の見どころ・城の味わいを、連載としてお伝えする。5回目(最終回)は出石城だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
但馬の小京都と呼ばれる出石。城下町の情緒がよく残っている人気の観光地です。国の重要伝統的建造物保存地区に指定されています。
出石では、ソメイヨシノとヤエザクラが違う時期に咲くことから、「出石の桜は2度咲く」と言われます。桜の名所の一つ、出石城跡には100本ほどの桜の木があり、毎年多くの人が訪れます。NPO法人但馬國出石観光協会によりますと、どこから見ても桜と城を楽しめますが、城の東側、豊岡市役所出石庁舎を少し過ぎたあたりからの眺めもおすすめです。
また、石段を登り、37の朱色の鳥居をくぐりぬけると稲荷神社に到着します、そこから見下ろせば、江戸を思わせる城下町ならではの街並みを、桜とともに望むことができます。
枝垂れ桜も見どころの一つです。ただ、植樹して間もない木も多く、見事な花を咲かせてくれるのは、もう少し先=数年先になりそうです。
さて、出石城は1604年、小出吉英によって、有子山の麓に築かれました。最も上が稲荷曲輪、本丸、二の丸、そして下の部分に三の丸と、はしごを立てかけたのような造りです。
建物は取り壊されましたが、野面積みの石垣はそのまま残っています。そして、かつて本丸があったところには隅櫓が復元され、登城門なども復元されています。
そして出石というと、忘れてはならないのが食! 出石そばです。1706年に仙谷政明氏が、信濃・上田から移ってきたときにそば職人を連れてきたのが始まりと言われています。その後、出石に独特の磁器・出石焼が生まれ、白地の小皿に盛る独特のスタイルが生まれました。
おなかを満たした後は、城下町を散策しましょう。誰もが思い浮かべるのが辰鼓楼。かつて大手門があったところに建っています。札幌の時計台と同じ時期、廃藩置県の直前に建てられたものとされ、日本で最も古い時計台として、今も時を伝えています。元々は東門の北に隅櫓があって、そこに大太鼓がつるされていましたが、太鼓の音が城下に響きにくいという理由で、1871年、現在の場所に移されました。時の太鼓は時計に変わりましたが、今も午前8時と午後1時には太鼓の音が、夕方には釣り鐘の音が鳴らされます。
辰鼓楼から駐車場を隔てたところに建つ家老屋敷は、藩主・仙石家の分家の屋敷でした。その家老屋敷から西へ200メートル、国道426号線に面して建つのが、明治時代の芝居小屋「永楽館」です。2008年に改修を終えてよみがえりました。回り舞台など貴重な装置が残されています。さらに、もう一つ。出石明治館。もとは明治20年建築の郡役所です。木造2階建てのレトロな洋館で、市の指定文化財となっています。
城と城下町の「和」と、洋館。時代を超えたまち巡りも、出石散策のおすすめです。出石観光に関する詳細は、但馬國出石観光協会、電話0796-52-4806。