「ジャズの街・神戸」を代表するイベントとして38年の長きにわたってファンを楽しませてきた「神戸ジャズストリート」が、2020年の開催を見送ることになった。昨年の台風19号の影響で資金面が厳しくなったのが直接の理由だが、実行委員会の高齢化も進み、2021年以降の開催も白紙の状態。全国のジャズストリートの先駆けだっただけに、ジャズファンの惜しむ声が聞こえてきそうだ。
神戸ジャズストリートが誕生したのは1982年。地方博の火付け役となった神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア'81)の翌年だった。博覧会の期間中、会場の一角の国際広場で4日間にわたって「ポートピア・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル」が昼夜にわたって開かれ、4万人のジャズファンが神戸に集まった。
イベントの存続を求めるファンの声を受けて、音楽プロデューサーだった故末廣光夫氏が実行委員長となって企画。NHKの朝の連続ドラマで脚光を浴びていた神戸北野町の異人館街を舞台とし、ライブハウスや神戸外国倶楽部など約10会場で、約200人のミュージシャンが正午から一斉にライブ演奏を繰り広げた。
出演者は、日本はもとより、ヨーロッパやアメリカからも招聘され、全国から神戸を訪れた数千人のジャズファンは、2日間にわたってお気に入りのバンドを追いかけて街を回遊。“ジャズのはしご”を楽しんだ。司会役などでイベントに関わり続けてきた元ラジオ関西アナウンサーで、現在はラジオパーソナリティーとして活躍する三浦紘朗(78)も「発足当初の数年間は、神戸外国倶楽部から生中継した。ファンが押し寄せ、大盛況だった」と振り返る。
名物のオープニング・パレードは阪神淡路大震災がきっかけだった。一時は開催すら危ぶまれたが、「神戸の復興はジャズの響きから」をスローガンに関係者が尽力。ニューオリンズ風のマーチングジャズバンドが行進し、被災地を励ました。以来、オープニングイベントとして定着。街の歩道には「KOBE JAZZ STREET」のプレートも埋め込まれ、神戸を代表するイベントに成長した。
38回の歴史を重ねてきたが、2019年は台風19号の影響で1日のみの開催になり、ミュージシャンへの支払いの一方で、チケットの払い戻しなどで収入が減少、事業を継続するための資金が厳しくなった。
実行委員長の川崎啓一さん(70)は、「神戸ジャズといえばジャズストリート。多くのファンに支えられてきただけに活動を休止するのは断腸の思い」と話している。