「今はまだ向かい風、ラグビーも向かい風のときは、失点を少なくしながら耐えるしかない。いつかきっと追い風が吹いた時は帆を張ってその風に乗って行けばいい」
渡辺氏によると、現在の商船の船乗りには前出の「手旗信号」や「モールス信号」の教練はないという。通信手段の発達により船の進路や状態の伝達も無線等ですべて事たりる時代となった。新型コロナウイルス禍によってマスク着用、大きな声を出さない・出せない状況下での無音の手旗による「ありがとう」を意味する信号は、記者の心を打った。
初めての「Friday Ovation」を終えたあと、帰港した同船の船着き場で行われた囲み取材で、渡辺社長は、愛するラグビー精神のベースとなるラグビー憲章・五つの言葉「品位、規律、結束、情熱、尊重」がまさにいまの世界に必要なものだと語っていた。
同社の社員総出で取り組む心意気、必死で頑張る医療関係者、日本・世界の人々に心からのスタンディングオベーションを送りたい。
(取材・文:黒川良彦)