兵庫県にはふるさと野菜や伝統野菜と呼ばれるものがいくつもある。そのなかの1つ、尼崎の伝統野菜「武庫⼀⼨」の販売が始まった。
「武庫⼀⼨」は⼀⼨と名がつくだけに、⼀粒3.3センチほどにもなる、粒の⼤きなソラマメ。
ソラマメの歴史をたどってみると、736(天平8)年、インドの僧侶を⾏基上⼈が摂津国難波津に迎えた際、僧侶が⾏基に「王墳⾖(おたふくまめ)」という⾖を与えたのが、⽇本にソラマメが伝わった最初とされる。
⾏基が武庫村(現在の尼崎)の農家に試作させたところ、⽣育がよく、元の⾖以上に⼤きくおいしく育ったという。以来、尼崎ではこのソラマメを作り続け、特に明治、⼤正、昭和初期が最盛期、⾼値で取引されていた。戦前には全国有数の産地となり、昭和30年ごろには30ヘクタールが作付けされた。
しかし、ソラマメは同じ場所では続けて栽培できないうえ、都市化によって農地や農家が減り、⽣産量も激減した。現在は尼崎市内では、20〜30軒の農家が武庫⼀⼨などの伝統野菜作りに取り組む。
10⽉に種をまき、5⽉の収穫まで7か⽉もの「⻑い」栽培期間となる。たい肥に追肥、そして⽔の管理を徹底。⾵、特に強⾵に弱いため、台⾵や⽊枯らし1号が吹く頃、そして春⼀番が吹く頃は倒れないように注意を払う。そして最近は「カラス」にも悩まされているという。
「⼿のかかる」野菜だが、栽培農家は「伝統を守りたい」と話す。
その幻の⾖の販売が尼崎市内の販売所で今年もスタート。「最近は急に気温が上がったため少し⼩ぶりかも」と話す農家もいるが、例年並みのいい出来だという。おすすめの⾷べ⽅は、塩ゆでのほか、アルミホイルに包んでオーブントースターで焼く。⽣産農家に聞くと、「煮⾖」「味噌汁にいれる」という答えも返ってきた。