本書では、平田氏が文化政策担当参与を務める兵庫県豊岡市についても、「豊岡市の挑戦」と題して章を割いている。同市では、ふるさと教育、英語教育に、演劇の手法を取り入れたコミュニケーション教育を全ての小中学校で実施している。
豊岡の英語教育が目指すのは、「世界で戦う人材づくりではなく、豊岡市を世界に開き、世界から人々を迎えいれることのできる人材の教育」。同市では既に「城崎国際アートセンター」で、世界のアーティストが創作活動を行い、小中学生が世界の最先端のアートに触れる機会がある。
世界の演劇関係者が集まる見本市的な機能を持たせた「国際演劇祭」も予定されている。平田氏が学長に就任予定の兵庫県立国際観光芸術専門職大学は、こうした豊岡の文化・教育政策の中核の一つとして位置づけられ、学生たちは演劇を学びながら、専門職大学の特色である臨地実務実習の一貫で国際演劇祭の重要な役割を担うことになる。
認可されれば、平田氏の理念の実践の場ともなる専門職大学は、22世紀を生きる子どもたちに必要な能力について、どのような答えを示すことができるのか。これから始まるチャレンジを考える上で最適な一冊だ。
「22世紀を見る君たちへ これからを生きるための『練習問題』」
平田オリザ著 講談社現代新書(860円 税別)
講談社BOOK倶楽部
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