神戸連続児童殺傷事件で、土師(はせ)淳君(当時11歳)が殺害され、24日で23年となるのに合わせ、父親で医師の守さんがラジオ関西など報道機関各社に手記を公表した。
守さんは2018年に解散した全国犯罪被害者の会(あすの会)で、犯罪被害者や遺族の権利の確⽴を訴え56万⼈分の署名を集めて犯罪被害者に関する基本法の成⽴にも貢献した。その後、被害者・遺族が刑事裁判に参加し、被告⼈に直接問いかける「被害者参加制度」の実現や殺⼈事件などの時効の撤廃にも⼒を注いだ。
2020年3月、長年放射線科の医師として勤務していた病院を退職、4月から個人病院に勤務している。やはり臨床医として働いていきたいとの思いがあったという。
■コロナ、人と人との関わり方変える
新型コロナウイルス感染症の感染拡大について守さんは「今後の人と人との関わり方を大きく変えていくと思われます。人と人との関わりというものは、本来非常に重要なものであると思いますし、人間関係の醸成は社会の発展においても重要な役割を果たすと思いますので、これが希薄になっていくかもしれないということについては危惧しています。犯罪被害者支援においても、心の通った支援を進めていくうえで問題が生じてくるのではないかと心配しています」と胸の内を語った。
■京都アニメーション放火殺人事件、被害者やご遺族に寄せる思い
事件発生時(2019年7月)から非常に心を痛めている守さんは「現時点では被害者・遺族の方々とは接触はありません。今後、私でお手伝いできるようなことがあれば、力になりたいという思いはもっています」と話した。
■守さんが寄せた手記は次の通り(全文)
この5月24日は、淳の23回目の命日にあたります。あの事件が起きてからもう23年も経過したのかという感慨はありますが、私達の子どもへの思いは変わることはありません。
今年も現時点では、加害男性からの手紙は届いていません。以前からお話ししていますが、加害男性に何故私達の次男の命が奪われなければいけなかったのか、と私達は問い続けています。彼には、私達のこの問いに対して答える義務があると思いますが、そのためには自らが犯した犯罪に対して真摯に向き合う必要があります。私達に手紙を書くという行為は、そのための重要な手段ですので、私達が手紙を受け取るかどうかとは関係なく、書くべきだと私は考えています。
この1年の間にも本当に胸が痛むような悲惨な事件、事故が起こっています。これらの被害者の方々へ支援が十分に行き届いているのかについては心配しています。私で力になれることがあれば、協力させて頂きたいと思っています。
2018年に解散した全国犯罪被害者の会(あすの会)の活動により、犯罪被害者を取り巻く環境は大きく改善しましたが、まだまだ残された課題は多いと思います。あとを引き継いだ「つなぐ会」や他の被害者団体の力だけでは、残された課題の改善は難しいことが多いと思います。支援団体や地方公共団体の方々と協力しながら、改善を進めていくことが重要となります。今後も、私が出来る範囲で被害者問題の課題について訴えて行きたいと思います。
令和2年5月24日 土師 守