生活に対する考え方が、がらりと180度変わるかもしれない。
ファッションデザイナー皆川明が手掛けるブランド「ミナ ペルホネン」の特別展が兵庫県立美術館で、7月3日から開かれる。現役のファッションデザイナーの特別展としてデザインの魅力を伝えることはもちろんだが、表面的なファッションデザインにとどまらず、環境やライフスタイル、労働環境にまで細かく深くめぐらせた皆川氏の考えに触れることができる。
特別展のタイトルは「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」。「空」、「土」、「種」……などの自然界を象徴する8種類のキーワードが各部屋につけられており、時間をかけて循環するイメージを想起させる。デザインのつくり手とそのアイテムのユーザーがつながるような関係を表している。「根」では皆川氏のイラストなどを展示して、ファッションデザイン以外の創作も手掛ける皆川氏の創作の根幹を垣間見られる。兵庫県立美術館の展覧会のために書き下ろされた完全新作が「a day in life」。直線を書き続け、2羽の水鳥を描写。「人生の中のある一日」の意味で、親密な家族のような、身近な人同士の関係性、生命のつながりを表現した。
「森」は、ファッションの流行にとらわれないモノづくりをしてきた「ミナ ペルホネン」の理念と哲学を知ることができる。ブランド設立当初からの約25年分の服、400着以上を一堂に集め、年代をミックスして展示。最新のアイテムも、少し前の時期に発表された服でも、みな分け隔てなく一様に同じ価値があることがわかる。短いサイクルで大量消費されるような服ではなく、長く繰り返し愛用される服を目指している「ミナ ペルホネン」の心意気を実感することになるだろう。
「種」では、「ミナ ペルホネン」のものづくりの哲学や創作のアイデアを、過去・現在・未来を通して知ることができる。皆川氏が19歳のころ、フィンランド・ラップランドへ旅行した際に出会ったコートが展示されており、旅費の大半を費やしたということで、「まさにひとめぼれ。様々な色の生地を重ねることで、日本では見られない世界観が表現されていた。これが私の原点」と振り返った。
皆川氏は、兵庫県立美術館での特別展開催にあたってコロナ禍に触れ、「新しい暮らしが始まる社会で大切なものは喜びだ。制約のもとでも喜びを感じながら充実した生活を送れるはず。物質的な豊かさよりも感情を大事にしたい」と語った。また「よいデザインをつくって国内の工場で生産する、この循環を続けたい」と強調した。同美術館の河田亜也子学芸員は、「ものづくりをめぐって一緒に働く人々を大切にする考えはシンプルだけど実現するのがむずかしい。商業的なデザインにとどまらない皆川さんの活動は、敬意を集めている。「ミナ ペルホネン」を知らない人たちにこそ、魅力を伝えたい」と話している。
「ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく」
https://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_2006/
チケット予約サイト
https://mina-tsuzuku.jp/outline/#ticket