センバツ甲子園の大会歌を合唱して球児へ贈ろう、と神戸の女子高生が取り組んでいる。3月19日に開幕する予定だった、第92回選抜高等学校野球大会が新型コロナウイルスの影響を受け中止になった。そのことに無念さを感じていたのは高校球児だけではない。開会式における大会歌の合唱をしていた、神戸山手女子高等学校の生徒たちも残念な想いを抱えていたのだ。
神戸山手女子高は、昭和30年から65年間にわたり選抜高校野球の大会歌を担当。半世紀以上にもなる長い時間の中で歌い継ぎ、大会に華を添えてきた。今年も大会に向け合唱の練習を重ねていたが、中止が決定し、その歌声を披露する機会が失われた。しかし、代わりに、出場予定だった32校を甲子園球場に招待する「2020年甲子園高校野球交流試合」が開催決定(8月10日から)。これを受けた生徒たちは「本当なら開会式で聞いてもらえたはずの大会歌を、交流試合に出る選手に届けたい」と希望し、合唱の練習が再開された。
彼女らが歌うのは、「今ありて」(作詞・阿久悠、作曲・谷村新司)。1993年の第65回選抜高校野球大会から採用された3代目の大会歌だ。参加できなかった春の開会式に代わる思い出づくりのために、中学校も含めた全生徒が練習に励んでいる。
今回行われる交流試合は、感染予防にともない開会式が簡素化される。球児たちに直接歌声を届けることができないため、神戸山手女子高が合唱を録音・録画し、DVDに収めて参加校へ贈ることにした。
7月29日から31日にかけて歌声の収録が行われた。録音は15名程度のグループに分けて歌い、最終的には合計22グループの歌声と、先に撮っておいたピアノの伴奏をあわせて完成。録画は参加生徒の全員が映るよう編集してDVD制作が行われる。練習の際は前後左右の距離を十分にとり、マスクを着用し、さらに歌う時間は20分以内。窓を開放して換気し、指導する教職員の前に透明シートを設置することで飛沫感染の予防が徹底された。
同高校1年2組の榎木あやさん(15)は、「歌えるのをすごく楽しみにしていたのでうれしかったです。うまく練習が進まないこともありましたが、みんなが団結することでいい歌声になったと思います。みんなで歌声に思いを込めたので、この思いが届くといいなと思います」と達成感をのぞかせた。同じく1年2組の児島綾音(あのん)さん(16)は、「歌っているときは緊張しましたが、練習の成果が発揮できてよかったです。入学して初めてコーラスを聴いた時は『自分も歌えるのかな』と不安になりましたが、先生方のわかりやすい指導のもとで練習することができました。球児の皆さんには、悔いなく試合をしてほしいです」とエールを送った。
伝統を受け継ぐため、1度しかない青春の思い出をつくるため、コロナ禍においても工夫を重ね、神戸山手女子中学校高等学校の生徒たち。その歌声は、試合に出場する選手にとって大きな励みになることだろう。DVDの映像は、交流試合が開幕する8月10日に同校のホームページで公開される。
■神戸山手女子中学校高等学校
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