――誰かが獲ってきたお肉を食べる、ということに前から違和感を抱いていたんですか?
どれだけ「動物が好き」だと言っていても、自分が今食べている肉の元となる動物とは、何も向き合ってないなっていうのは、悶々と……中学校、高校くらいの時からあったんですね。でも今、狩猟のために山に入っていると、その瞬間だけは山の生態系の一部に混ぜてもらっているな、という感覚を手に入れられる。他の動物たちがやっている、弱肉強食の世界みたいな、食うか食われるか的な世界に入っていきたい、と思っています。
◆猟師生活20年、千松さんの「今」
――最初に獲物を獲った時と、今とでは心境に変化はありましたか?
これくらい続けていれば、もうちょっと慣れてルーティンっぽくできるのかなと思っていたんですけど、思っていた以上に慣れないというか。1シーズンに10頭くらいしか獲らないので。神戸なら六甲の方から、イノシシが街の方へ出てくるのを見る人もいると思うんですが、どんくさい奴なら3日くらいで獲れることもあるし、1シーズンの3か月4か月、一切獲れずに逃げ切られることもあって……なので思ったより慣れない。本当に殺すときはいろんな感情が今でも出てきます。
――それは、かわいそうという感情でしょうか?
映画『僕は猟師になった』にも出てきたと思うんですが、罠にかかって痛そうにしているとすごく可哀想なんですよ。なんとかしてあげないとって。まあ「なんとかする」=「殺す」なので……。そのへんの感覚がちょっと「おかしい」と言われるかもしれませんが、とどめを刺す時はなるべくスムーズに、苦しませることなく終わらせたいと思っています。
※ラジオ関西『PUSH!』2020年9月17日放送回より
プロデューサー:京田光広/伊藤雄介
監督:川原愛子
製作:NHKプラネット近畿
配給:リトルモア/マジックアワー
■映画『僕は猟師になった』公式サイト
https://www.magichour.co.jp/ryoushi/
■映画『僕は猟師になった』公式Twitter
https://twitter.com/ryoushimovie
■映画『僕は猟師になった』公式Instagram
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