「下戸」(げこ)は「上戸」(じょうご)の対義語で、お酒が飲めない人のことを指すのだが、こうした区別は過去のものになるかもしれない。ロンドンでフルーツビネガーをボタニカルや果実でフレーバー付けした「シュラブ」が流行し、ノンアルコールドリンク専門のバーまで登場するなど、欧米では「モクテル」(※)がブームとなっている。
(※)“mock”(=疑似)と“cocktail”(=カクテル)からなる造語
今、日本で注目されているのが「オルタナティブアルコール」だ。オルタナティブとは「既存のものの代わりになりうる」という意味で、単にアルコールが入っていないだけでは不十分。求められるのは「食事に合うこと」で、ソフトドリンクとは明確に区別される。
「オルタナティブアルコール」の素材として使われるのが「お酢」。近年は、料理に使う調味酢だけでなく、りんご黒酢、ヨーグルト黒酢のような「飲むお酢」(食酢飲料)が登場。これらは炭酸や水で割ることを前提に造られているため、カクテルのベースに応用できると考えられた。カクテルの定義は「混ぜること」だが、ジュースや果汁、炭酸を混ぜるだけでは単に「味を重ねる」ことに過ぎない。しかし、そこにお酢の酸味が加わることで、飲みごたえは残したまま風味がまとまる。
ノンアルコールカクテルの歴史は古く、約150年前のカクテルブック「HOW TO MIXDRINKS」(1862年・ジェリー・トーマス著)の中では、前述の「シュラブ」が紹介されている。禁酒法時代には「シュラブ」が酒代わりに飲まれていたといい、アルコールが入っていなくてもカクテルと呼ぶことができることがわかる。
「オルタナティブアルコール」を使ったカクテルは、9月から11月に、京阪神の45店舗で楽しめる。神戸市内では、花隈にあるバー「サヴォイ オマージュ」や岡本のイタリア料理店「アリオリオ」、石屋川の神戸酒心館の中にある「さかばやし」など。価格設定は店ごとに異なるが、通常のカクテルと同等とすることがルールとなっているため、平均すれば1,000円前後だという。