では、「必要なハンコとは何か?」となると、実社会でハンコそのものの実用性だけを突き詰めるのがいいのでしょうか? はたまた、ハンコをあくまでもご朱印への使用など文化的なものにとどめておくのが良いのでしょうか?
これまで日本人は、ごく当たり前の習慣についての是非を問うことがなかった。コロナ禍が世界を巻き込み、日本では7年8か月ぶりに総理大臣が変わったからこそ出現した現象ではないかと思うのです。
そこで私は「印」について、実務的に有効か否かだけではなく、文化的背景や子どもの頃に作った消しゴムハンコといった想い出も含め『脱・ハンコ』のもたらす影響を考えたいと思います。
河野太郎規制改革大臣は2020年9月、行政手続きでの押印を原則として廃止するよう、すべての府省に求めた。新型コロナウイルスの感染防止のために需要が高まった行政手続きの簡素化を目指したもので、各府省が押印を存続する方針を示したのは1%未満の111種類だったという(10月16日現在)。
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◆森清顕(もり せいげん)1976年京都・清水生まれ。年末12月12日に清水寺で行われる「今年の漢字」の揮毫で知られる森清範貫主を父に持つ。清水寺執事補、塔頭・泰産寺住職。上智大学グリーフケア研究所非常勤講師、立命館大学歴史都市防災研究所客員研究員も務める。また法話会や講演、メディアを通じて日本の文化や風習などに関する情報発信を続けている。