密売目的で覚せい剤を隠し持っていたとして、覚せい剤取締法違反容疑で兵庫県警に逮捕された住所不定・無職の男(45)について、神戸地検がより罰則の重い麻薬特例法違反罪で起訴していたことが29日、捜査関係者への取材でわかった。
男は神戸を拠点とする大規模な覚せい剤密売グループを率いていたとみられ、兵庫県警はこれまでに岡山県の暴力団関係者を含む密売グループのメンバーや、譲渡先の客などを逮捕した。関与の度合いから末端のメンバーや客の一部は起訴猶予処分となっているが、逮捕者の数は数十人に及ぶという。
兵庫県警は5年前、尼崎市のホテルが現場となった違法薬物の大量密売事件を摘発したが、逮捕されたイラン人を含む密売グループの男女12人は、ビジネスホテルをアジト(拠点)として組織の実態を隠して売買を繰り返し、売上金は約4億円にのぼった。今回の事件は逮捕者の数でこれを大きく上回った。
男は2020年1月、神戸市内で職務質問され、覚せい剤を隠し持っていたとして覚せい剤取締法違反容疑で逮捕。このほか大麻や麻薬・モルヒネも所持しており、神戸地検は男が違法薬物の密売で生計を立てていたなどとして、より罰則の重い麻薬特例法違反罪を適用、2020年9月に起訴した。起訴状によると、男は2017年7月~2020年1月、兵庫、岡山県内で覚醒剤や大麻を多人数に売り渡すなど、薬物の密売を生業(なりわい)にしていたとされる。
捜査関係者によると、このグループの1回の密売量の傾向として「さほど多くない」という。男は2020年1月の逮捕直前、岡山県内の暴力団関係者から1回あたり約14グラムの覚せい剤を譲り受けるなど、量としては小口なのが特徴。しかし事件に関与した人物が多数に及ぶことから「小口の密売を積み重ね、かなりの収益があったのではないか」と分析する。薬物密売の捜査は末端の人物を逮捕して、上層部まで突き上げるケースが多いが、今回は先にグループの中心人物の身柄を拘束したことで早期の全容解明を図りたいとしている。