大阪市を廃止して4つの特別区を新設する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票、反対票が賛成票を上回り、2015年5月に続いて否決された。大阪市は24区のまま政令指定都市として存続する。
「一丁目一番地」。看板政策の実現に尽力した大阪維新の会は事実上のラストチャンスにかけたが、わずか約1万7000票差で反対が賛成を上回った。大阪維新の会代表の松井一郎・大阪市長は「大阪維新の会、僕は終わりです」と2023年4月の任期満了での政界引退を改めて宣言。吉村知事は3度目の住民投票について「もう(3度目の)挑戦はない。悔いはない」と言い切った。
推進派の大阪維新の会関係者は「正直、反対派が終盤にここ追い上げるとは思わなかった。大阪市『廃止』という言葉が、有権者にとってかなりマイナスイメージとなったのは否めない」と分析した。一方、連日街頭演説した反対派議員は「日に日に手応えを感じ、これはいける(反対多数で)とにらんだのは投票日の2日前。それにしても政令市の廃止、という誰もが経験していないことの賛否を問うのは、有権者の皆さんには過酷だったような気がする」と振り返った。
大阪では2025年に万博開催を控える。いまは新型コロナウイルスの影響でインバウンド(訪日外国人)の姿はなく、大阪を含む関西は経済再生への起爆剤を見い出せないままだ。
神戸市中央区に住む40代の飲食業男性は「都構想、賛成だったんですが残念です。関西のリーダーである大阪に新しい都市のあり方の見本になってもらいたかったです。そうすれば神戸にも、関西全体にも勢いや活気を与えるんじゃないかと思っていました。結果は否決でしたが、今後は、もっと広い連携、神戸・大阪・京都を軸にして関西が1つになるような仕組みが必要ですね」と話した。
ナニワのシンボル「通天閣」を運営する通天閣観光・高井隆光社長はラジオ関西の取材に「いやぁ、またも反対票多数ですか。特に終盤は通天閣の下での演説が多くなり、私もその度に双方の主張に聞き入ってました。『シコリが残るかも』と心配するほど、地域住民を二分する応援合戦でしたね。予想はしてたものの、前回同様ここまで拮抗するとは……そして2度目の否決。大阪市民みんなが持っている大阪市への誇りをくすぐる、反対派の『迷ったら反対』というキャッチコピーが心の隙間に響き、前回と同じく都構想のメリットが最終的には伝わらなかったのなぁと思いました。拮抗していた賛成票の意義も考えると今回の選挙結果も『勝者なき民意』だったとあらためて実感しています。コロナ禍の中で大阪経済も踏ん張らなくてはいけない苦難の時。2025年大阪万博の盛り上がりに向けても大阪市民の一致団結を切に願うばかりです」と前向きにコメントした。