令和2年の日本において、人類史上初の“コロナ禍”に暗くなりがちであった世間を励ますかのように、生命力の象徴の実をつけたこのタチバナの樹。我々が直面している未曾有の大危機に「負けてはいかん。皆で頑張り通しなさい」と、黄金色に輝く果実を通して鼓舞してくれたようにも思える。
(文:黒川良彦)
『参考資料』(湊川神社広報室提供)
■「不老長寿の実・非時香果(ときじくのかぐのこのみ)」古事記
「垂仁天皇が田道間守(タジマモリ)を、不老不死の力を持つと言われる『非時香果』を探しに常世の国へ遣わしました。艱難辛苦のうえ十年の歳月をかけてやっと『非時香果』を見つけた田道間守は大喜びで持ち帰りましたが、その1年ほど前にすでに天皇はこの世を去っておられました。田道間守は悲しみのあまり亡くなってしまいました」。この『非時香果』はタチバナのことで、田道間守はお菓子の神様として神社におまつりされています。
■「楠木正成公と橘」
当社のご祭神楠木正成公は、敏達天皇を始祖とする「橘氏」の流れ、橘諸兄の末裔を称しておられました。湊川神社でも、菊水紋の他に橘紋を使用することもあり、本殿西側に橘樹を大切に育てています。
「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝に霜降れどいや常葉の木」(聖武天皇御製歌)
これを神楽歌とした舞「橘の舞」は湊川神社の巫女舞として、楠公祭など大祭で神前に奉奏されています。
■「右近の橘・左近の桜」―日本の文化と橘
平安宮内裏の紫宸殿の前庭、西方の右近衛府、東方の左近衛府にそれぞれ植えられていました。雛人形のお飾りでもなじみ深いものです。文化勲章のデザインに使用され、五百円玉にも描かれており、古くから日本の文化に深く関わる由緒ある樹であることがわかります。
湊川神社(楠公さん)
http://www.minatogawajinja.or.jp/