有本明弘さん「平和な日本でこうした悲劇が」娘・恵子さんへの思い語る 神戸で拉致問題考えるパネル展 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

有本明弘さん「平和な日本でこうした悲劇が」娘・恵子さんへの思い語る 神戸で拉致問題考えるパネル展

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 北朝鮮による拉致被害者を取り上げたパネル展が、神戸市中央区の兵庫県警本部などで始まった。神戸市長田区出身で、留学先のイギリス・ロンドンでの留学を終えて1983年、ヨーロッパを旅行中に消息不明となった拉致被害者の有本恵子さん(失踪当時23)の父・明弘さん(92)が訪れ、早期帰国に向けて拉致問題解決を訴えた。12月16日まで。

有本明弘さん(2020年12月10日 兵庫県警本部)
有本明弘さん(2020年12月10日 兵庫県警本部)

 拉致問題を風化させず、広く情報提供を呼び掛けるため、「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」(毎年12月10日~16日)に合わせて開催。恵子さんのほか神戸市東灘区に居住していた拉致被害者・田中実さん(失踪当時 28)、さらに兵庫県と関わりがあり拉致の可能性が否定できない男女27人の顔写真やプロフィールを紹介している。

 恵子さんは、“よど号ハイジャック事件”のメンバーらによってデンマークのコペンハーゲンに誘い出され、そこから北朝鮮へ拉致されたとされる。北朝鮮政府は、2002年9月17日の日朝首脳会談後に、「恵子さんは1985年12月に同じ拉致被害者の石岡亨さんと結婚、翌年娘を生んだが、1988年11月4日にガス中毒で子どもを含む家族全員が死亡した」と説明した。しかし明弘さんは2020年1月、ラジオ関西の取材に「非常に不確かな情報で信用できない。それならば、娘を生き返らせるために闘うことにした。それが取り戻すということだ」と表現した。

有本明弘さん
恵子さんの写真とプロフィールを見つけ「20歳ぐらいの時かな」とつぶやく明弘さん

 明弘さんは約70年連れ添い、2月に93歳で亡くなった妻・嘉代子さんについて「できれば一緒に、帰国した恵子を迎えたかった。いつもいつも『必ず解決するから』と2人で言い聞かせてきた。太平洋戦争が終わり、平和になった日本でこうした悲劇が繰り返されたんや」と悔しさをにじませた。

 さらに拉致問題解決に向け「家族会」でともに手を取り合った横田滋さんが6月に87歳で他界し、残された家族らの高齢化が進む。「私たちが直接出向いて連れ戻すこともできない。生きて拉致問題解決の日を迎えることができるのか」とも話した。

 安倍晋三前首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領の連携は「強い姿勢で北朝鮮に向き合ってくれた。必ず拉致問題を解決できる」と評価していたが、菅義偉首相とジョー・バイデン次期大統領に関しては「全く未知数」と話すにとどまった。

2019年6月、明弘さんのもとにトランプ氏の直筆「明弘、あなたのために全力を尽くしています。あなたはきっと勝利するでしょう」という内容の英文書簡が届いた 写真左は次女・尚子さん
2019年6月、明弘さんのもとにトランプ氏の直筆「明弘、あなたのために全力を尽くしています。あなたはきっと勝利するでしょう」という内容の英文書簡が届いた 写真左は次女・尚子さん

 恵子さんは今年、還暦を迎えた。「恵子には『病気せんと長生きせえよ』と伝えたい」と語った。年が明け、1月12日には61歳の誕生日を迎える。

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