今年の兵庫県豊岡市のトピックスとしては、新型コロナウイルス感染拡大の影響がある1年のなかでも、無事に開催され成功を収めた「豊岡演劇祭2020」を挙げることができるだろう。平田オリザさんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『平田オリザの舞台は但馬』(ラジオ関西)のなかで、演劇祭を担当した豊岡市役所大交流課職員の水谷和馬さんは「ゴールが見えないことが大変だった」と、振り返った。
「『保守的な考え方』と『実施するための提案』が6月頃から常に拮抗していた」と水谷さん。「アーティストが表現したいことと、一般の人の考え方を埋める作業に、最初は戸惑いもあったが、一つの価値観を共有できることの強さも知りえた」と、収穫も大きかったようだ。
これに対し、平田さんは「(アーティストは)費用対効果とか作業効率では動かない。うまくいく時は少ない投資で大きなリターンがあるが、その逆もある。一番、行政にとってはリスクが高い(笑)。しかもうまくいった時は案外評価されない」と述べ、調整役の水谷さんを労った。
「僕は3年前にUターンで帰ってきたのですが、18歳の時に離れた豊岡とは、(今は)違う豊岡がある。東京や大阪でしか観られないような演劇が豊岡で観られるのは子どもたちにとっても良いこと。『これ、パパの仕事だよね?』と子どもに言われたのは素直にうれしかったし、自信にもつながった」と、水谷さんは変化する豊岡を伝えた。
また、水谷さんは演劇を用いた職員採用試験の1期生でもある。「僕の時の課題は7人のグループで、お題は『豊岡から城崎地区が独立したいといっている。その諮問委員会を劇にしてほしい』というもので、『そうか……』と(笑)。最初はグループワーク的なものかと思いましたが、演劇となるとスタンドプレーは通用せず、チームにならないと始まらない。難しい課題なんだけど、やりやすかったです」と笑顔で応え、「コロナがない状態で目一杯、演劇祭をやってみたい」と意欲を見せた。
※大交流課:『芸術文化観光専門職大学の開校』、『豊岡演劇祭の実施』、『演劇を生かしたまちづくりを推進する』という3本柱の窓口となるのが、豊岡市役所「大交流課」。単なる「観光課」ではなく、「豊岡に力を貸してくれる人、豊岡をキーとして人がつながることこそが大事」と、中貝宗治豊岡市長自らが命名した。
※『ラジコ』では放送後1週間はタイムフリーでの聴取が可能。番組では、平田オリザさんが、ともにパーソナリティーを務める田名部真理さんと、これまでの自身の話しや演劇界への思い、移住拠点となっている兵庫・豊岡、但馬地域について、トークを進めていく。
『平田オリザの舞台は但馬』
放送日時:毎週木曜日 13:00~13:25
放送局:ラジオ関西(AM 558khz / FM 91.1mhz)
パーソナリティー:平田オリザ、田名部真理
◆芸術文化観光専門職大学
https://www.tajima-kakeru.jp/