大阪・新世界の通天閣(大阪市浪速区)は、年末の恒例行事として 12月28日に予定していた「干支(えと)の引き継ぎ式」を中止する。1956(昭和31)年に始まって以来、初の中止となる。 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、観客や関係者の安全面を考慮した。
「干支の引継ぎ式」は、その年と翌年の干支にちなんだ動物が実際にステージで対面して世相を踏まえたダジャレの口上が披露され、観客の笑いを誘う年の瀬の風物詩。
通天閣は2020年、緊急事態宣言が発令された4~5月に休業したが、この間、賞味期限間近で廃棄されそうな全国各地のお土産を受け入れて割引価格で販売したり、 シンボル的存在の幸福の神様「ビリケンさん」の背中のひび割れを京都の仏師・松久靖朋さんが修繕。また大阪府独自の警戒基準の到達レベルを周知するためのライトアップにも無償で協力。SNSでは「ライトアップに勇気づけられた」「通天閣ありがとう」という感謝の声が数多く寄せられた。
しかしお膝元の新世界ではインバウンド(訪日外国人観光客)の姿はなくなり、度重なる営業時間短縮が影響して飲食店の売り上げは激減、通天閣とセットでフォトスポットとなったフグの大提灯でおなじみ「づぼらや」が、創業100年にして閉店した。
運営する通天閣観光・高井隆光社長はラジオ関西の取材に対し「今年の通天閣は新型コロナとの戦いのなか、緑・黄・赤・青と色々なライトアップで皆さんにメッセージを送り続けてきました。こうしたなか年末に苦渋の決断をしなくてはならないのが辛いです」と話し、来年の干支・丑年(うし)にかけて「来年こそはモ~cowる(儲かる=も~かる)1年に。ウッシッシと笑えることを祈っています」とダジャレ口上の一節を披露した。