作品としては、近未来が舞台で、現代より数百年後の地球。植物は破壊され人類はドームと呼ばれる場所で都市文明を築いている。
高汐巴演じる主人公「ソーン」や、彼を追う「カーン」は新人類と呼ばれ、人としての感情を抑制し、戦うことだけをインプットして育てられている。
そんな「ソーン」が、戦いの中で子どもを殺せなかったこときっかけに、自分の生き方に疑問をいだき、ドームを脱出し、森にたどり着いたところからお話は始まります。
森はおろか自然を見たこともない「ソーン」。そこに暮らす女性「メイ」の存在によって、「ソーン」には次第に感情というものが芽生えてくるのです。
「メイ」を演じているのは、この作品がトップ娘役としてのお披露目となる、秋篠美帆。少女のようにくるくる表情が変わるのが印象的でした。
森に暮らす人々は、言葉を使わずにテレパシーでお互いの思いを伝えあう。この……テレパシーで伝える。というのが『レコード・アーカイブス』的にはとても難関で、「なに?」「ええ」「まさか??」と会話の軸を伝えずに、返事だけをセリフで言い合うという、まったくもって、ラジオ的でない。解説が難しい……。と、作品を選んでから後悔をしました。
でも、音だけでリスナーのみなさまに、この作品の良さを伝えることができれば、それはまさに森にすむ人々と同じ。「心の翼にのせて伝える」ということ。そう思い、がんばって編集しました。
アニメではよくありそうな近未来のsituationですが、1985年の宝塚では、なかなかにストーリーの背景がわかりづらい。それでも語り継がれる名作となったのには、やはりこの主題歌が大きかったと思います。
今はインターネットをひらけば、様々なことがわかり、まさに情報過多な時代ですが、この森にすむ人々のように、言葉を使わなくてもお互いの心を通じ合い、「思いやる」ことを忘れない。それが本当の友であり、仲間であり、生きるなかで大切なことではないでしょうか。
それが涙……。泣くことも笑うことも、ネットからではなく、そばにいる誰かから感じたいものです。