平田家の主人は、代々「夫平(ぶへい)」を襲名し、家業の傍ら詩歌、書、茶道など風流事をたしなみました。今回の展示では、明治22(1889)年に不惑の年を迎えた当時の夫平が発起人となってつづった俳句集や短冊を展示しています。
挿絵には、赤穂出身の日本画家で、朝廷から法橋の位を叙任された北條文信も参加しています。
その制作年から、寛治さんの兄であった重之さんが三代目の夫平であった時に作られたものと思われます。俳句のときに使うペンネームである俳号は「鏡花」と言いました。寛治さんは四代目の夫平で、歌人としての号は「稔」でした。
内蔵吉さんは治療活動のかたわら詩の創作をされており、晋策さん、寛さんは、それぞれ多数の著作を刊行されています。オリザさんのお父さんの穂生さんもシナリオライターの他に著作を出版されています。
つまり、平田家の人々はそれぞれ生業を営みながら、文学活動にも取り組みました。そのような家系を背景に持たれていることも、劇作家としてのオリザさんという個性が生まれた遠因なのかもしれない、と思われるのです。(赤穂市立美術工芸館 田淵記念館 学芸員・味呑英和)
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■「赤穂市立美術工芸館 田淵記念館」
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