毎週日曜午前8時からのラジオ番組『ラピスモーニング』(ラジオ関西)で、神戸大倉山・楠寺瑠璃光苑の住職、「ラピス和尚」さんの楽しい仏教うんちくを届けています。日頃なにげなく使っている言葉が、思いもよらない“ふか~い”意味を持っているもの。そんな感動をラジトピで連載していきます。3月28日放送回の辻説法は、とあるお寺の掲示板にあった「世界中どこをさがしても あなたの代わりはおりません」という言葉に着目します。
「世界中どこをさがしても あなたの代わりはおりません」
本当にそうなのでしょうか……。初めて会った人に、「あなたは誰かによく似てる」と言われます。誰だったかなぁ……、「あ! 小学校の時の同じクラスの人だった」とか、「いとこに似てる」はよくある話。珍しいケースでは「飼っていた犬」というパターンもありました。
急な転勤が決まり、明日から自分のいない職場は大丈夫だろうかと心配で見に行くと、みんなイキイキ働いていたりすることもありました。あまりにそんなことが続くと、「この世界に自分などいなくてもどうでもいいのではないか」、「もしかしたら、いない方が周りの人に迷惑をかけないのではないか」など思えることさえあります。
たくさん後ろ向きなことを書きましたが、では、「世界中どこをさがしても あなたの代わりはおりません」という言葉について、改めてみていきましょう。
日本における曹洞宗の開祖、道元禅師の言葉「他は是れ吾にあらず」にあたり、道元禅師が中国の天堂山で修行中、1人の老僧の典座から教わった言葉とのことです。
他の人に何をしてもらっても自分でしたことにはなりません。自分が眠いとき、他人がいくら眠っても眠気はとれず、他の人がどれほどごちそうを口にしても自分は空腹のまま。自分が生きる上で与えられた課題や問題を解決するのは、自分しかいないということなのです。
周りにどう思われようと関係ありません。与えられた命を存分に役立てる責任は、この世に生を受けた自分しか果たせないもの。わかりやすい言葉にみえますが、本当は「おまえはその生き方でいいのか」と問われている言葉でもあります。
今回は「世界中どこをさがしても あなたの代わりはおりません」をご紹介しました。
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