2050年度までに二酸化炭素の排出実質ゼロを目指す国の政策に呼応し、「ゼロカーボンシティ」を宣言した兵庫県姫路市に、水素ステーションが完成した。兵庫県内では、尼崎市と神戸市に続き、3か所目。4月2日に開業する。
場所は姫路バイパス姫路南ランプから南へ約500メートルのガソリンスタンド跡(同市飾磨区中野田)で、普通自動車約300台分の液化水素を貯蔵するタンクと水素充填機1基を備える。設置・運営者はエネルギー関連事業の岩谷産業(大阪市)。
地球上に無限にある水素は使用時に二酸化炭素を排出しないので、エネルギー問題と環境問題を同時に解決する“究極のエネルギー”と呼ばれる。グリーン成長戦略を掲げる政府は水素を脱炭素社会実現のためのキーテクノロジーと位置付けており、2050年までに年間消費量を現在の1千倍以上の2千万トン程度に引き上げる目標を立てている。
しかし、水素燃料で走行する自動車(FCV)の登録はまだまだ全国で3千台を超えたばかりで、県内ではわずか60台のみ。水素ステーションが自立的に運営していくために必要な顧客は1か所当たり約900台分とされることから、現時点で姫路では採算ラインに届かないが、トヨタがFCVの量産体制を整えたこともあり、「ステーションがなければFCVが普及しない」(同社広報部)と先行投資を決めた。ステーション建設には一般的に5億円かかるというが、国から総工費の3分の2、県と市から5千万円ずつの補助を受けた。
姫路商工会議所や経営者協会、交通・運送事業者の代表など約50人が参加して現地で3月26日に開かれた開所式では、同社の間島寬社長が「水素は大きな可能性を持ったエネルギー。水素社会の早期実現へ地元経済界の協力を」、県の田中基康環境部長も「バスやトラック業界は、県や市の手厚い補助があるこの機を逃さないで」と水素燃料電池車の導入を各界に要請。また、姫路市の清元秀泰市長は「近い将来は西国の海の玄関口である姫路港に水素の搬送拠点を誘致し、グリーン成長戦略を地元の産業発展につなげていきたい」と抱負を述べた。(播磨時報社)