「5万回斬られた男」として知られ、数多くの時代劇で活躍し、今年1月に77歳で亡くなった、俳優の福本清三さんをしのぶ展覧会が15日、出身地の兵庫県香美町で始まった。
香美町観光大使も務めた福本さんは1943(昭和18)年2月3日、兵庫県城崎郡香住町(今の香美町香住区)で6人兄弟の三男として生まれた。1958年、中学を卒業して15歳で時代劇全盛の東映京都撮影所に専属の大部屋俳優として入った。20代から斬られ役として、亡くなるまでの約60年間、東映時代劇をはじめとする数多くの映画やドラマに出演、「5万回斬られた男」と言われた。
福本さんにしかできない、斬られた瞬間に体をえび反りにし、苦悶にゆがむ表情を見せながら、そのまま後ろに倒れて絶命する迫真の斬られ方は、見る人を圧倒した。また、全身バネのような細身で素早く斬りこんでくる立ち廻りや細面の鋭い眼光と濃いアイシャドウのメイクが、見る人に強烈な印象を与えた。
地元・兵庫の姫路市でロケが行われたアメリカ映画「ラスト・サムライ」(2003年)では、トム・クルーズ演じる主人公を警護する寡黙な侍(サイレントサムライ)役に抜てきされ、世界からも注目された。東映を定年退職してからも現役として活躍し、2014年には映画「太秦ライムライト」で、斬られ役一筋の大ベテラン役者「香美山清一(かみやま・せいいち)」役で初めて主演を務めた。この作品はカナダのファンタジア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞し、香美町でも上映会が行われた。そのとき、里帰りした福本さんは舞台あいさつで「斬られるだけしか能のない脇役なのに、こんなことになってしまって、ただただ戸惑うばかり。多くのみなさんのおかげ、そのことに尽きます」と語っていた。
最近では昨年11月に放送されたテレビドラマ『十三人の刺客』(NHK)にも出演していたが、今年1月1日、肺がんのため、京都市内の自宅で亡くなった。
今回の展覧会では、福本さんが出演した映画「太秦ライムライト」や「あのひと」などのポスター12点などが展示されている。(※当初は5月2日までの会期だったが、緊急事態宣言発出により中止に。【4月26日追記】)
香美町内では香美町香住観光協会ロビーでも、福本さんのサイン色紙や、主演した太秦ライムライトの台本の複製、著書などが展示されていて、7月末まで開催予定。(【4月26日追記】)