作詞家・松本隆 「不幸であることと馴れ合い、傷を舐め合う詞は書かない」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

作詞家・松本隆 「不幸であることと馴れ合い、傷を舐め合う詞は書かない」

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 日本を代表する作詞家・松本隆(以下、松本)の作品を、オルゴールの調べに乗せて高校生が朗読するイベント「風街神戸=オルゴール+ポエトリーリーディング~松本隆の詞を読む~」が、3月下旬、神戸市内で開催された。ジャンルを超えたクリエーターやアーティストが集い、テクノロジー、エンターテイメント、教育など様々な角度から神戸の魅力を発信するイベント「078KOBE」のコンテンツだ。

 松本といえば細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂とともに、1970年代のはじめに伝説のロックバンド「はっぴいえんど」で活動した後、作詞家として2000曲以上の作品を発表し、ヒットチャートの1位を記録した曲は50曲以上にものぼる。

 太田裕美「木綿のハンカチーフ」、近藤真彦「スニーカーぶるーす」、桑名正博「セクシャル・バイオレットNO1」、寺尾聡「ルビーの指環」、KinKi Kids「硝子の少年」、松田聖子「赤いスイートピー」など、世代を超えて愛される作品の数々だ。

松本隆(写真提供:078神戸実行委員会)

 松本は自身の作詞のポリシーについて、こう語った。

「不幸であることと馴れ合って、傷を舐め合うような詞は書かない。失恋して落ち込んでも、どうやってそこから立ち上がれるかという希望を探すのが基本的なテーマ。不幸なまま終わる詞はない。例えば松田聖子の『風立ちぬ』(1981年、作曲:大瀧詠一)では、『今日から私は心の旅人』になって生きていく、という意思表示をしている」

 また、安田成美の『風の谷のナウシカ』(1984年、作曲:細野晴臣)のレコーディングで、手が震えるほど緊張していた彼女に対し「一番ラクな姿勢で歌っていいよ」と言うと、「スタジオの真ん中であぐらをかいて歌った」という微笑ましいエピソードも飛び出した。

「風街神戸」で朗読に参加した高校生は、放送部や放送委員会に所属する生徒たちだが、昨年はコロナ禍の影響で、目標とする大会や文化祭が中止になった。松本も多くのライブハウスや音楽仲間が苦境に立たされていることに胸を痛めた。そこで、神戸のミュージシャンを中心に約200人がオンラインで松田聖子の『瑠璃色の地球』(1986年、作曲:平井夏美)を歌う動画を制作したところ、本家の松田聖子が再レコーディングし、NHK紅白歌合戦でも歌った。この出来事は松本にとっても「神戸で、仲間うちで始めたことが東京も動かせるという自信になった」と話す。

 早くから西洋文化を受け入れた神戸の街にふさわしいオルゴールは、100年前のドイツ製ディスクオルゴールなど3器種が六甲オルゴールミュージアム(神戸市)から会場に運ばれ、松本作品のオルゴール音源がこの日のために制作された。

 作詞家として50年。時代を超えて人々の心を揺さぶる松本作品と、オルゴールの音色、そして、いま青春を生きる高校生の朗読による化学反応は、ラジオの特別番組『風街神戸=オルゴール+ポエトリーリーディング~松本隆の詞を読む~』として5月19日(水)午後7時30分からラジオ関西で放送される。


『風街神戸=オルゴール+ポエトリーリーディング~松本隆の詞を読む~』(ラジオ関西)
2021年5月19日(水)19:30~20:30放送

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