兵庫県姫路市の日本製鉄瀬戸内製鉄所・広畑地区の工場(姫路市広畑区富士町)で5月、エックス線装置の点検作業をしていた男性作業員2人が大量の放射線を浴び、体調不良を訴えていることが関係者への取材でわかった。
日本製鉄などによると、5月29日午前、瀬戸内製鉄所・広畑地区の工場に勤務する50代と30歳代の男性作業員2人が、エックス線を照射してメッキの厚みを測定する装置を整備していたという。2人は翌日に体調不良を訴え、現在も高度な被ばく医療を行う広島大学の専門医療施設に入院、治療を受けている。
厚生労働省は点検作業中にエックス線が照射されたままの状態になり、2人が大量の放射線に被ばくしたとみている。放射線業務に携わる作業員は、全身への被ばくの影響を示す「実効線量」に照らすと、法令で定められた1年間の被ばく限度・50ミリシーベルトを超えてはいけないことになっているが、2人の被ばく量はこの数値を大幅に超えたとみられている。
事故を受け、厚生労働省は6月1日、放射線を扱う業界団体など11団体に点検作業を行う場合は装置への電力供給を停止することなど被ばく防止の徹底を求める通知を出した。さらに兵庫県警が業務上過失傷害容疑、姫路労働基準監督署が労働安全衛生法違反などの容疑を視野に入れ、事故の原因について調べている。
日本製鉄(本社・東京都千代田区)はラジオ関西の取材に対し、「室内の事故で、外部への漏えいはない。関係当局への調査に最大限協力し、早急に原因を究明して再発防止に取り組みたい」とコメントした。なお2人の容態については、プライバシーに配慮して明かしていない。
日本製鉄瀬戸内製鉄所・広畑地区では、5月21日に関連会社社員が一酸化炭素中毒で死亡、26日には足場を解体中の下請け会社作業員が転落死するなど事故が相次いでいる。
《日本製鉄》
かつて官営・八幡製鐡所など複数の製鉄業者が合同、日本製鐵(当時)となり、戦後の財閥解体により、このうち八幡製鐵と富士製鐵という大手鉄鋼メーカー2社が過度経済力集中排除法廃止後、1970年(昭和45年)に合併して誕生した新日本製鐵と、住友グループの鉄鋼メーカー、住友金属工業が2012年に合併して新日鐵住金となり、2019年4月1日に商号変更された。