兵庫県宍粟市波賀町にある、「にこにこマート」。大型なスーパーではないものの、地域一丸で経営されているお店だ。というのも、実は波賀町にはスーパーがない。いかにして「にこにこマート」の運営に至ったか、「にこにこマート」の店長で、波賀購買店整備委員会の坂口和幸さんと、宍粟市・市長公室の名畑浩一さんに話を聞いた。
昔、波賀町には「JA播磨Aコープ波賀店」というスーパーが経営されていたが、2018(平成30)年3月に閉鎖されてしまう。唯一のスーパーであった店がなくなり、高齢者やファミリーをはじめ、地域住民は困惑。
そこで、宍粟室の市長公室に務める名畑浩一さんは「何とかして、波賀町にもう一度、購買店を作れないだろうか」と思案。ここからお店立ち上げの計画がスタートした。
最初は、大型コンビニを経営する会社へ相談し、連携ができないか話し合ったという。「波賀町に実際に視察にも来てもらい、協議を進めた」が、問題が重なり実現は不可能になった。
「このままでは実現が難しい」となったことで、購買店を実現するために募った有志たちで様々な案を出し合い、基盤づくりに着手。「波賀購買店整備委員会」を発足させて、本格的に話し合いを進めていくなか、課題となったのは、店づくりや運営の資金だった。そこで地域住民に協賛金を募り、協力を投げかけた。すると、当初の目標よりも多くの金額が集まったという。
地域の思いが集まった資金を元に、購買店を作る計画が大幅に進み、「にこにこマート」は昨年(2020年)12月5日にオープン。実現までに2年を費やしたという。
波賀町から少し遠い地域には、一店舗のみ小売店がある。しかし、その小売店とライバル関係になるのではなく、「一緒にやっていけないか」と、今では仕入れを共同で行い、協力関係を築いている。そして野菜は、「地元農家に声をかけて『にこにこマート』にも卸してもらっている」という。
「これからも利用者の声を聞きながら、末永く経営を続けていきたい。まだまだ頑張りたい」と、名畑さんと坂口さんは明るく前を向いた。