亡き妻の声で故郷に導かれたウェンウー。村に封印された魔物たちは彼をあやつり、その時を待っていたのだ。封印を解かせぬよう、兄妹、そしてケイティは一致団結して、村の人々とともに魔物の復活を阻止しようと死力を尽くす。シャン・チーの叔母・イン・ナン(ミッシェル・ヨー)も秘術を尽くして闘う。それは彼女の代表作『グリーン・デスティニー』を彷彿とさせる美しいシーンだ。ウェンウーとリーの戦いも、踊るようなたおやかな動きが実に見事だ。
父子の確執を超え、ヒーローへと成長していく息子……。
ダイバーシティ(多様化)を表現する映画作品として、確固たるジャンルを築きながら、主人公を演じたチャドウィック・ボーズマンの死により、今後の展開が難しくなってきた『ブラックパンサー』シリーズ。『シャン・チー』は、いわば東洋版『ブラックパンサー』として、それに代わる発展を遂げることを期待されている。
そしてこの映画は、あの『ブエノスアイレス』『花様年華』『インファナル・アフェア』、そして『ラスト、コーション』などで国際的に知られるトニー・レオンのハリウッドデビュー作ともなった。
ミッシェル・ヨーは『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』のボンド・ガールとして、一足早くハリウッドデビューを果たし、2011年『The lady アウンサンスーチー 引き裂かれた愛』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』にはカメオ出演もしている。実はふたりは1962年生まれの同い年。アラカンなのに色っぽいトニー・レオン。相変わらずシャープな身のこなしが美しいミッシェル・ヨー。やっぱり、すごいスターだ。
往年の美男美女に対して、主演のシム・リウは普通にどこにでもいそうな顔だし、『フェアウェル』での好演が印象に残るオークワフィナには、どこか椿鬼奴か、横澤夏子か、いとうあさこの面影があり、メンガー・チャンは片桐はいり、はたまたハイヒールのリンゴにも似ている気がする……。
ま、こんな親近感いっぱいのキャラクターが大暴れするという展開は、特に日本人にとっては距離感としてうれしい限り。しかもファンタジー感もハンパないこの作品、監督は『黒い司法 0%からの奇跡』などのデスティン・ダニエル・クレットン。彼がハワイ生まれで、友人たちのほとんどが「文化的に混ざり合った家系」の出身だったことも、この作品の演出に大きく関わっているような気がする。
マーベルの社長で今作の製作も務めているケヴィン・ファイギが「心から登場させたい素晴らしいキャラクター」というシャン・チー。新たなヒーローの誕生を、カーアクション、カンフーアクション、ワイヤーアクション、それにVFXも満載でドラマティックかつダイナミックに描いた作品。
【『シャン・チー/テン・リングスの伝説』公式サイトURL → marvel.disney.co.jp/movie/shang-chi.】