29日、自民党新総裁に選ばれた岸田文雄前政調会長に対して、北朝鮮による拉致被害者の家族らは悲痛な声で訴えた。近年は新型コロナウイルスの対応や日米のトップ交代と拉致問題がさらに解決へ向けて動く気配もなく、家族の高齢化だけが進む。
1983年、留学先のイギリス・ロンドンで消息を絶った拉致被害者・有本恵子(失踪当時23)の父親・明弘さん(93)は神戸市長田区の自宅で総裁選を見守った。「日本政府はずっと(拉致問題を)ほったらかしてきた。特にコロナ禍で見過ごされている。恵子(現在61)も帰ってくる頃にはおばあちゃん。誰が総裁になっても同じではないか」と淡々と語った。
そして「親子3代にわたる独裁国家、北朝鮮への対応は一筋縄でいかない。日朝会談の実現を。そのためには、拉致問題解決に向けての志半ばで去年退任した安倍元総理からのアドバイスを受けてほしい」と話した。
1977年、新潟市内で拉致されたとされる横田めぐみさん(失踪当時13・現在56)の母親・早紀江さん(85)は「総理大臣はこれまで何人代わったか分からない。何も解決しない」と疲労の色をにじませた。そして「(子どもが)どんな悲惨な思いをしているか。親は毎日考えている」と強い口調で話し「本当に正念場。日朝首脳会談を実現してほしい」と期待を込めた。
家族会代表の飯塚繁雄さん(83)も「岸田新総裁は『私の手で解決する』とはっきり意思表示し、具体的な計画を示して動いてほしい」と訴えた。