芸術の秋を、感じてみたい、何かアートなことをしてみたいと思っていた今日この頃。
実は、“ラジオパーソライター”(ラジオパーソナリティー+ライター)こと、私、わきたかしが、少年時代に生きるヒントを、もらった昔話がありまして。『牡丹(ぼたん)の花とねずみ』という話なんですが……。
<昔々あるところに、腕のいい木彫りの彫刻師が2人いて、その2人のどちらの腕がいいのか、勝負して決めようと話が持ち上がりました。その勝負の日に、1人目の彫刻師が彫ってきたのは大きな見事な牡丹の花の彫刻。もう1人の彫刻師は、小さな手のひらサイズの、なんてことない、ねずみの彫刻。みんなは、この勝負は牡丹の花の彫刻師の方が勝ちだと、そう思っていたところに、1匹の猫がふらりと現れ、なんと、彫刻のねずみに飛びついて、くわえて立ち去って行ったんです。その結果、猫が本物のネズミと見間違えるほどの出来栄えの作品を作った方の彫刻師が勝利した>……そんなお話しなんですが。
実は、このねずみの彫刻には、カラクリがあって、これは、木を彫って作った彫刻ではなく、なんと、かつお節の塊を彫刻したものだったんです。猫は、本物のネズミと見間違えたのではなく、猫が大好きな魚でできている鰹節(かつおぶし)だから、くわえて立ち去って行ったのです。
僕は、小さい時に、この話を聞いて、すごく衝撃を受けました。「これぞ、生きていくヒント!」だと。技術だけを磨くのでなく、そこにアイデアを入れれば、鬼に金棒。生きていく知恵として、アイデア次第で何事にも左右していくと。
あれから時はたち、いまだに、この話は、私の生きるヒントになってるわけですが、今になって思うのです。
・鰹節で彫刻ってできるの?
・それって木の彫刻に見えるの?
・本当に、猫が寄って来るの?
などなど、ちょっとした疑問がわきまして……。ならば、この芸術の秋に実際に作って、実験してみようと、鰹節の塊を買って来て、彫刻刀で彫り始めたんですが。
鰹節って、カッチカチ! めちゃくちゃ固いんです!