そこへ仲居さんが「最初のお肉でございまーす!」と笑顔で肉皿をどどーーーん!
「えええ! 最初からこんだけ出てくるの!? ぶるぶる、これが武者震いってやつか。ええい、中年夫婦の胃袋をなめるなよ!」と、自らを奮い立たせ、おもむろに但馬牛を1枚取ったところ……、
「なに!? 向かいにいる夫がみえない……」
手のひらサイズを優に超える但馬牛は見事な霜降り。JAたじまさん……これ、“顔パックサイズ”ですよね。
お肉がこんなにあるのですもの。もう、ひと口目はレアに仕上げて「塩」のみでいただくに限ります。サッとあぶって口にいれると、但馬牛の脂の香りがパッと広がって、じゅわっとうま味がほどけていくんです。
思わず夫と顔を見合わせました。「今年で結婚20年……劇団員と書店員だった私たち、いろいろあったけど、何とかここまで頑張ってこれたね!」と、一瞬感傷に浸るも我にかえり、ここからは怒涛の「焼き」に徹します。
すき焼き鍋がお肉のうまみで満たされた頃合いを見計らって、但馬産の新鮮野菜と割り下を投入。じゅうじゅう、じゅうじゅう、我々の興奮度を再現するかのような音が楽しい! 甘辛いお肉を卵にくぐらせると、またこれまでとは違った味わい。危険、これはごはんがススムくんだわ!