このメインテーマについて、大関は、「『醸す』という言葉には、『酒や醬油、味噌などを醸造する』という意味の他に、『時間をかけて変化させる』『大切に育む』などの意味があります。本テーマには、大関が1711年の創醸時から長い歳月を重ね、酒造りを通して先人から大切に受け継いで来たものを更に未来へ醸成させていきたいという想いを込めました」と述べている。
加藤登紀子は放送のなかで、自身や娘が歌う「酒は大関」、そして、自身もナレーションとしてCMのなかで語る「歳月を重ねて、未来を醸す。」という言葉に込めた思いを、次のように明かす。
「(「酒は大関」が生まれた)1970年頃の日本は、『知床旅情』を歌っていた頃だったが、地方からみんなが集団就職で出るなど、『田舎を捨てた時代』。ものすごい勢いで前へ進もうとしていた。
私も前に進もうとするものを感じて生きてきた世代だが、戦後に新しくなろうとしていたとき、最先端を走ってきた永六輔さんは、いまふと振り返ると、古いものをすごく一生懸命に残そうとしていた。新しい時代に躍進する心と、古いものを大切に残そうという心が重なり、大きな伸びしろになって、あの人の存在感になっている。
その永さんにあやかるというわけではないが、これまで歌ってきた楽曲に照らし合わせてみても、私も置いて行かれる田舎や故郷のことをものすごく歌ってきたんだなと思う。
この歌のなかには『友と語る、ふるさとを語る』とあるが、当時はそのことが心にしみる時代だった。でも、今はもはや『故郷』という意識が全くない世代(が多い)。そして、『故郷に出会う』時代、地方に移住する時代が始まっている。だからこそ、(「酒は大関」を)そのシンボルにしたい」
その加藤登紀子の思いとともに、大関の長部社長は、『歳月を重ねて、未来を醸す。』というテーマに、「人と人との関係性であったり、地域の社会であったりとか(を示す)、非常に奥行き、深みのある、素敵な言葉だなと思う」とコメント。「拡大・量産の時代から質を高めていく。酒造りもそうありたい」と、未来志向で語っていた。
なお、加藤登紀子は毎年恒例の「ほろ酔いコンサート」を今年も11月から12月にかけて大阪、横浜、京都、名古屋、東京で開催する。そのうち、大阪・横浜・東京ではYaeも出演予定。昭和版と令和版の「酒は大関」を生で聴き比べできる絶好の機会となるだろう。
(取材・文:黒川良彦)
◆新商品で“ほろ酔いトーク”
『加藤登紀子の地球に乾杯』の生放送の序盤には、大関の創醸当時の屋号「大坂屋(オオザカヤ)」の名前を冠した同社の新商品「創家 大坂屋 純米大吟醸酒」を加藤登紀子、Yae、長部社長の3人が味わいながら、“ほろ酔いトーク”が展開された。
少量しか造られない小仕込み(こじこみ)で生産された「大坂屋」。長部社長も含めて、手作業で蒸米や水を運び、毎日もろみの様子を見守り造られた貴重なお酒だ。「創家 大坂屋 純米大吟醸酒」をスタジオで試飲した加藤登紀子いわく「おいしい! 甘くて切れ味があり飲みやすく、しっかりしている」。新たに立ち上げられた「大坂屋」ブランドは、1711(正徳元)年、江戸に元禄文化が花開いていた6代将軍徳川家宣の時代、長部家の先祖である大関株式会社初代大坂屋長兵衛が、摂津国・今津村(現在西宮市今津)で酒造りを始めたことに由来するという。
なお、今回の締めくくりでは、加藤登紀子作詞・作曲で、1987年にリリースされた「時には昔の話を」(1992年・宮崎駿監督アニメ映画『紅の豚』エンディングテーマソング)を長部社長がリクエスト。楽曲を聴きながら、加藤登紀子、Yae、長部社長は、思いを重ねていた。
(取材・文:黒川良彦)
・大関株式会社 公式HP
・加藤登紀子 公式HP