――ティアック株式会社が最後までMDオーディオの生産・販売を続けられたのはなぜですか?
弊社には「録音と再生の技術で今と未来をつなぐ」というポリシーがあります。他社がMDオーディオ事業から撤退していくなか、我々まで生産・販売を辞めてしまうと、MDを聴けなくなってしまうので、できる限り続けたいという思いがありました。そのため、生産に必要な部品を買い溜めして細々と続けていたのですが、その在庫が底を尽き、2020年12月で販売を終了することになりました。

――近年、MDオーディオ商品を購入されたのはどんな方が多かったですか?
昔からMDディスクで音楽を聴いていた人が、壊れてしまったなどの理由で再度購入される「買い替え需要」が中心でした。また、弊社のグループ企業の「タスカム」でも、事業者向けに同じシステムのMDオーディオ製品を販売していたのですが、そちらはブライダル会場や公民館などが、自分のオリジナルディスクを再生したいという施設の利用者の希望に応えるために購入されることが多かったようです。
――今後、MDはこのまま消えていくのでしょうか?
暗い話になってしまいますが……そうだと思います。MDは、情報が間引きされた圧縮音源を録音・再生できるディスクなので、音質よりも利便性で選ばれていました。最近は、カジュアルに音楽を聴くならストリーミング、高音質でしっかり聴くならハイレゾ音源というように、データで音楽を聴くことがほとんどになってきています。そのため、カセットテープやCD、MDのような、録音・再生媒体が新たに登場することもないのではと考えています。
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ただし、ティアックでは、現在も自社製品の修理は行っているそう。いつか消えてしまうかもしれないMD、今のうちに聴いてみて!
(取材・文=村川千晶)