JR西日本は、兵庫県尼崎市で乗客106人が死亡した2005年の福知山線(宝塚線)脱線事故の追悼慰霊式について、事故から17年となる来年(2022年)4月25日には、新型コロナウイルス感染拡大で中止が続いた追悼慰霊式を、現時点では3年ぶりに追悼施設「祈りの杜」(尼崎市久々知)で開く方針を示した。
遺族・負傷者を対象に、6~7日、兵庫県伊丹市で非公開の説明会(オンライン参加も含む)を開いた。同時に大阪府吹田市の社員研修センターに整備する新施設での事故車両や、事故現場に残されていた遺留品約1100点についての保存方針も伝えた。
JR西日本によると、2024年の完成を目指す新施設で、損傷が激しく復元が困難な1~4両目は部品に裁断し、原形をとどめる5~7両目はそのまま保存することなどを遺族らに伝えたという。
新施設では、事故車両を前に遺族らが献花や焼香ができるようにする計画も立てている。ただ、新施設の内部を一般公開するかどうかについては「今後の検討課題」としている。
遺族の1人(60代男性)は「事故を知らない人が増えてくる。本来ならば車両は現場に戻し、人々に見てもらうのがよい」と話した。そして負傷者の家族(60代女性)は「被害に遭った人たちでないと語れない事故の真実がある。それは個々の目で電車内を見ているから。ありのままを示すことも重要だが、遺族、被害者の心情も汲み取り、過剰な刺激にならないような配慮をしながら慎重に進めて欲しい」と要望している。
1985(昭和60)年の日航ジャンボ機墜落事故では、羽田空港の安全啓発センターが開館、機体の残骸や部品などを公開するまで21年の歳月を費やした。
事故は尼崎市のJR福知山線(宝塚線)で発生。上り快速電車がカーブを曲がりきれずに脱線し、線路脇のマンションに激突。乗客106人と運転士1人が死亡し、562人が負傷した。