戦いがひと段落すると、今度は他愛のない日常的な会話。罵倒しりあうふたり。どうやら少女と青年は「でこぼこバディ」らしいのです。
ポップな原画と、繊細な動画。「厨二病」全開の気持ちの良いセリフ運び。少女は等身大ほどの武器を携えて敵と戦いますが、それは大剣……に見せかけて銃槍でもあるようです。変身するときの効果音も心地よい。ちょっと待ってくださいよ。こんなの、「全員好き」に決まってるじゃないですか。
音楽と音響にも粗は見当たらず、考え抜かれたアクションにそれを最大化させるカメラワーク。たとえば爆発のシーンでは画面が微かに揺れ動きます。カメラの揺れを表現して臨場感を出しています。特撮や日本アニメの系譜にも籍を置いた作品と断言して良いでしょう。
1話で全貌を明かされることはありませんが、どうやら舞台はアメリカで、どうやら彼らは中西部からニューヨークを目指しているらしい。それもクルマ1台で。
映画ファン、もっと限定するならば、洋画ファンのツボを押さえに押さえたディテールが詰まったアニメシリーズです。
音楽モノ、バディムービー、ロードムービー、変身ガジェット、アニメーション演出、ディストピア設定、第一次世界大戦モノ……2021年までのエンタメのフェティッシュがまるで幕の内弁当のように詰め込まれています。
なにこれ、映画じゃん!
などと感涙していると「エンドロール」が流れ始めます。黒背景に白字のクレジットが下から上へとスクロール。なんだ、やっぱり映画じゃないですか。憶測にしか過ぎませんが、この作品の作り手たちは「映画」という文化の脈を強烈に意識しているように思えてなりません。
川合裕之(かわい・ひろゆき)
1995年生。webマガジン「フラスコ飯店」編集長。『週刊ラジトピ』に出演中。よく道に迷う。