事故物件住みます芸人、松原タニシによるラジオ番組『松原タニシの生きる』に、認知症の医療を専門とする「しおかぜメモリークリニック」の南辰也医師が出演。今回も引き続き、精神医学の観点からリスナーの相談に回答した。
現在“終活”をテーマにしているという松原タニシ。そのなかでも重要になる遺言について南医師に尋ねると「認知症の方をメインで診療しているので、仕事上、遺言を書く前の人と会う機会が多いです」という。
「具体的には本人(認知症の患者さん)がきちんと判断した上で遺言を書けるのか、あるいは書ける状態じゃないかを診ることがあります。本人の様子や家族の方から話を聞いて総合的に判断していますね。遺言は後々で問題が起こると大変なので、難しい仕事です」
そんな南医師に、今回、リスナーから次のような質問が寄せられた。
「認知症の方が亡くなられる直前に、昔の優しい表情に戻ったり昔の歌を口ずさんだりして安らかに旅立たれる、という話を聞きます。この話を聞いた私は『人間には何かスイッチのようなものがある』と感じたのですがどうでしょう? 私も昔から物忘れがひどいので、頭の体操をしてスイッチのコントロールを会得したいです」
まず「認知症の方が昔の優しい表情に戻る」ことに対して、南医師は「認知症の様々な症状の中に“多幸感”というものがあります。ずっと笑顔でいる状態のことなんですが、その症状かもしれません」と回答。この症状が起こる要因は様々だが、周囲との人間関係や認知症になる前の本人の性格などが影響する可能性があるという。
「あえて一言で言うなら“業”かもしれません。人付き合いや社会とのつながり、その人がどう生きてきたかも関係しているのかもしれないですね」と語る南医師。物忘れが多く頭の体操をしたいというリスナーに向けて「認知症にならないようにするというのは難しいかもしれませんが、(認知症に)なったときも幸せに過ごせるよう、いろんな人と付き合ったり関係性を良くしたりしておくと、幸せに過ごせるかもしれません」とメッセージを送り、日々の積み重ねが重要であると締めくくった。
※ラジオ関西『松原タニシの生きる』2021年11月14日放送回より
◆南 辰也 医療法人社団澪標会 理事長/しおかぜメモリークリニック 診療部長。同院を19年に開院。認知症診療を中心にからだとこころの総合的な治療をおこなっている。診療科は精神科、心療内科、内科、リハビリテーション科