神戸市では今年の6月、「神戸らしいファッション文化を振興する条例」が制定されました。神戸市では、「衣・食・住・遊」に関わる生活文化産業全般を「ファッション産業」と位置付けています。具体的には、洋服・靴・洋家具・洋菓子・パン・コーヒー・真珠加工・ケミカルシューズ・清酒を指し、これらをまとめて「ファッション産業」と呼んでいます。今回はその中の1つ、「真珠加工」についてのお話です。
神戸の真珠産業が本格的に始まったのは、1928年(昭和3年)。真円真珠の特許が公開され、各地で養殖場が増加してからです。当時、真珠生産の大部分は輸出に向けられていました。そこで、国際貿易港を備え、真珠の養殖場が多い三重県や四国に近いという地理的条件から、異人館街として知られる北野町(神戸市中央区)を中心に神戸で真珠の加工・流通が発展しました。
神戸で真珠加工が発展したのには、「貿易」や「養殖場との地理的条件」以外にも、神戸ならではの理由があります。真珠の加工に必要な安定した光が、六甲山に反射して北側から得られたことです。北野町には、通称「パールストリート」と呼ばれる通りがあり、約220社の真珠関連業者が集まっています。
現在でも、神戸は国内外で流通する真珠の選別加工を行っています。世界有数の真珠の加工・集積地となっていて、真珠の世界輸出量の実に約70パーセント(※1)を神戸が担っています。旧居留地の東端に佇む「日本真珠会館」(神戸市中央区)では毎月数回、真珠の入札会が盛況のうちに行われています。
日本真珠会館は、1952年(昭和27年)に竣工した鉄筋コンクリート造り、4階建ての近代建築で、2005年(平成17年)には国の登録有形文化財となりました。1階には「神戸パールミュージアム」があります。今から114年前の1907年(明治40年)に日本で真円真珠の養殖技術が確立されてから今日に至るまでの歩みや、真珠ができるまでの過程などを、わかりやすく、模型や実物の真珠を使いながら展示しています。
神戸の真珠加工は、歴史に裏付けられた奥深い神戸のファッション産業と言えます。