言葉について書くようになってから、「これって、どういう意味?」、「なんでこんな言い方?」などと、周りから尋ねられることが増えました。そして皆、最後は「調べといて」と一言を残して去っていきます。ありがたい反面、何かと大変です。調べれば調べるほど、「ことば」は難しいし面白いと感じています。
さて、今回は「ぐうの音」。「グウノネ」? これって、何でしょう。よく「ぐうの音も出ない」という言い回しで使われます。意味は「詰問されて、一言も返すことばがなく、閉口することにいう。」(『広辞苑 第七版』/岩波書店)
では、「ぐうの“音”」って、どんな音なのでしょうか?
前出の広辞苑、「ぐう」の項目には、「空腹時に腹の中のガスが移動してたてる音。『-とお腹が鳴る』」とあります。この「ぐう」は、お腹が空いて鳴る、あの音を示しているようです。
一方、擬音語や擬態語の辞書『日本語オノマトペ辞典』(小学館)には、「ぐー」の項目の2番目に、「呼吸がつまったり、ものがのどにつかえたりして、苦しいときに発する声。苦しい状況に追いこまれたさま。『ぐうの音も出ない』(=辛らつに言われて、一言も反論できないこと。また、声も出なくなるほど、たたきのめされること)」と書かれています。
『明鏡国語辞典 第三版』(大修館書店)には「ぐうの音も出ない」の項目で、「一言も反論できない。『ぐう』は息が詰まったときなどに発する声」と載っています。
これらを総合すると、ドラマや映画などで答えに困った時などに、よく「うっ…」と息をのむ、台詞のような動きのような表現方法がありますが、まさにああいう「声のようなもの」をぐうの“音”だと言うことができそうです。
それにしても、最初にこれを説明した人の感性はすばらしいですね。日本語にはこうした言葉だけでなく、「擬音・擬態」の表現もたくさんあります。改めて本当に奥の深い言語だと実感しました。
言葉は時代とともに、その意味も使い方も変化します。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。