【福本社長】 在庫として残ったレザーの小口販売に取り組んでいる。まずは10年前からインターネット販売を開始した。すると、趣味でレザークラフトを楽しむ人や作品をネットで個人売買する人がリピーターになった。十分にニーズがあると分かり、ホームセンター店頭でも取り扱いしてもらうようになった。
次に2015年春、数千種類のレザーの中から1枚単位で購入できるレザーギャラリーを本社横に建設した。タンナー自らが常設で展示販売する施設は業界初なので、会社の知名度を上げるのにも非常に役立っている。
これら小口販売はコロナ禍でも好調で、緊急事態宣言中は百貨店や専門店が営業縮小した影響でメーカーへの販売数量は大きく落ち込んだが、ネットを通じて逆に伸びていったから驚いた。
――今後の新しい展開は?
【福本社長】 SDGsやカーボンニュートラルが叫ばれるようになり、私たちも環境への配慮が一層求められるようになる。しかし、鞣(なめ)し剤の主流であるクロムは排水処理に多額の経費がかかり、植物性のタンニンは森林伐採といった弊害もある。そこで、環境に負荷をかけないゼオライトという鉱物を使った新しい鞣し技術の導入を目指し、いち早く研究開発に取り組んでいる。ただし、同業者と競争するつもりはなく、業界全体を盛り上げるため、環境に優しい技術を確立して普及させたい。
――皮革業界の展望は?
【福本社長】 また伸びるチャンスはきっとやって来る。人口の多い中国の経済が豊かになり、庶民がレザー製品を持つようになった。この先、途上国も豊かになるので、レザーの消費量は増えるのが間違いない。そのうち中国や東南アジアの人件費も日本と変わらなくなるだろう。そうすると日本で消費する品物をわざわざ海外で作る必要もなくなる。それまでの辛抱だと考えている。
当社としては、今は少量多品種の細かな対応をしっかり遂行することで取引先をサポートし、当社を気に入ってくれる取引先を徐々に増やしていきたい。
◆株式会社三昌
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