今回も野球実況の際に使う言葉です。前回も書きましたが、私も実況アナウンサーの世界の隅っこで、野球や陸上などを中心にしゃべってきました。特に野球は、高校野球からプロ野球までいろいろな試合を実況してきました。その中で時々叫んでいたのが「ど真ん中」。「直球ど真ん中、ストライクー! 見逃し三振!」とかなんとか言っておりました。
この「ど真ん中」という言い方。実は二重表現ではないのか? と以前から気になっていたので、これを機に調べてみました。
『広辞苑 第七版』(岩波書店)によりますと「ど真ん中」は、「(ドは接頭語)『まんなか』を強めた語。まんまんなか。」となっていました。つまり「ド」を付けることで強調されている、と。
一方、『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)には「[もと、大阪方言]」とあり、②として「ちょうどまんなかに当たるところ。(以下一部略)」、さらに「口頭語表現」と記されていました。どうやら二重表現ではないようですが、他に引っ掛かることが出てきました。
もともと“大阪の方言”?
確認のため、『関西弁辞典』(ひつじ書房)を引いてみました。すると……ありました! 「東京に取り込まれた関西弁」という項目に。少し長くなりますが、引用します。
「『ど真ん中』『ど根性』などと言う表現は、もともとは関西弁である。東京では『ど真ん中』は本来『まん真ん中』と言った。しかし今では東京でも『まん真ん中』と言う人はもうほとんどいない。特に『ど真ん中』の場合、これを典型的な関西弁だと意識する人は多分少ないであろう。」
その上で、こう書かれています。
「一旦東京に入り込むと、それが今度はメディアによって全国に逆流する。発信地が東京なので、関西弁と意識されることがないわけである。」