ふるさと納税の受け入れに精彩を欠く姫路市が斬新かつ大胆な戦術に打って出た。返礼品として姫路城の殿様になれるというプレミアムなプランを開発したのだ。条件となる寄付額は3千万円以上と全国でも超高額の部類。旬の食材や家電製品など単にモノを送るのでなく、全国に通用するキラーコンテンツ、姫路城を最大限に活用した体験型返礼で巻き返しを図る。
同市のふるさと納税受け入れ額は2018年度に約1億1400万円の過去最高額を記録したが、市内医師から新生児の聴覚検査費用助成基金として1億円の寄付があったためで、特殊要因を除けば毎年のように県下41市町中ワースト10以内の低空飛行が続いている。
低調ぶりを市議会から再三指摘されてきたこともあり、市はテコ入れに着手。今年度は目標額を1億円に設定し、これまで1社だった仲介サイトを3社に増やしたほか、サイト内検索で上位掲載される工夫やメルマガの小まめな配信に鋭意取り組み、11月末ですでに7500万円を集めている。順調に成果を上げているが、今回のプレミアムプランはアフターコロナの観光振興や地域産業活性化に一層の効果上積みを狙って職員が知恵を出し合ったという。
プランでは、まず寄付者を専用ヘリコプターで神戸空港か関西空港に出迎え、市内着陸後はハイヤーに乗り換えて陸路、姫路城へ。迎賓館で休憩後、いよいよ登閣の段には、きらびやかな紋付羽織袴や戦国大名ばりの勇ましい甲冑など希望する衣裳を用意する。城内ではテレビの専門番組にも多数出演する有名な城郭研究家が、普段は非公開のエリアを含めて付きっきりで案内。また、城内いくつかのポイントでは甲冑姿のエキストラが現れて敵味方に分かれ、歴史大河さながらの実演を交えて日本城郭史上最高峰という姫路城の鉄壁の防御機能を解説するなど、姫路城にまつわる逸話を紹介していく。
城内の案内は約2時間程度で、その後はJR姫路駅前のホテル日航姫路へ。宿泊はもちろんスイートルームで、夕食は古文書に記されている「城主御膳」を、姫路の食材をふんだんに用いて現代風にアレンジし提供する。スイートルームは3人まで泊まれるが、城内の見学は寄付者が希望すれば人数が若干増えても受け入れ可。ほかにも姫路城主になった証として、姫路城への永久入城チケットと寄付者の肖像画が贈呈される。
全国では1億円の寄付で防災シェルター、2千万円超でキャンピングトレーラーが送られるなど、高額寄付への返礼品はモノが主流だが、体験型の返礼品では同市のプランが最高額。果たして寄付してくれる人は現れるのか。地方創生室の担当者は「ぜひ寄付していただけるよう、一生懸命PRしていく」と意気込んでいる。
体験日は2022年3月12〜13日と翌週の3月19日〜20日、寄付は各回先着1組を募集している(2022年1月31日締切)。
(播磨時報社)