これまでで一番苦労したのは「辰(たつ)」。曲線の表現が難しく、何度も試行錯誤を重ねたという。
干支飾りの製作は、デザイン設計を担当する野中さんのこだわりがとても強く、「決して妥協しないところが一番大変」。また、干支飾りには図面が存在せず、完成イメージが野中さんの頭の中にしかない。野中さんの納得の行くものにならない限り、何度もバラしては作るという工程を繰り返す。「彼についていくのは大変だが、それでもその強いこだわりのおかげで毎年とても立派で質の高い干支飾りを完成させることができる」と竹内さんは話す。
干支は2022年の「とら」をもって一回りしたが、干支飾り製作は来年以降も続く予定。「製作に携わるチームも高齢化が進んでいるので、もし現メンバーが年をとって引退となっても次の世代にバトンタッチし、これからもずっと続けていきたい」(竹内さん)
時間がたつとわらが黒く変色してしまうこともあり、5月には燃やして処分される干支飾り。こだわりが凝縮された、その年限りの市川町の新たな“名物”には、これからも注目が集まりそうだ。
(取材・文=みねほのか)