西暦32年、反ローマの嫌疑により十字架にかけられたイエスは、埋葬から3日後に復活したと伝えています。人々の心の中に、彼の教えが永遠に生き続けるという意味なのでしょう。
イエスが「救世主」(ユダヤ人の言葉でメシア、英語読みではメサイア。ギリシャ語でクリストス、日本ではキリストと表記)だという信仰、つまりキリスト教は、イエスの死後300年間、ローマ帝国で弾圧され、信仰は水面下で広がりました。313年に「ミラノの勅令」で、ローマ皇帝のコンスタンティヌス大帝が信仰を認めました。390年代には、キリスト教がローマの国教になり、他の宗教が禁止されるくらいに大きく発展していきます。
その後、各地のキリスト教のリーダーが集まり、地域ごとにバラバラだった考えをまとめます。イエスの伝記や言葉、誕生日も各地でそれぞれに伝えられていましたが、「ニケ―ヤ公会議」、「コンスタンツ公会議」などの宗教会議で、教えが統一されていきました。
冬が厳しいゲルマン地方では、日照時間が最短の12月末に、太陽の復活を願う大きな儀式がおこなわれていました。この冬至の儀式、つまりキリスト教以前の北ヨーロッパ最大の宗教行事をキリスト教最大のイエスの生誕祭と重ね合わせ、最終的に12月25日がイエスの誕生日となったのです。
クリスマスに欠かせない讃美歌「きよしこの夜」は、1818年にオーストリアの小さな村の牧師が作った詩に音楽の先生が作曲したものです。世界に広まり、日本では明治に由木康牧師が翻訳をします。
由木は鳥取生まれで、県立神戸第二中学校(今の兵庫高校)から関西学院専門部文科に入学。私の高校、大学の先輩にあたります。「きよしこの夜」の訳者が、阪神間と関係があることも知っていただけたらと思います。
・解説=「兵庫・神戸のヒストリアン」 田辺眞人(園田学園女子大学名誉教授)
※ラジオ関西『田辺眞人のまっこと!ラジオ』2021年12月24日放送回、「田辺眞人のラジオレクチャー」より