「○○模様」の示すものに話を戻すと、現在、日常生活では2つの使い方が混在しています。「これからそうなると予想される」場合と、「いまその状況にある」場合です。日常と放送で用法が異なりつつある言葉も存在しており、それがかけ離れてくると何が「正しい」のか判断しづらくなります。そこで今回、放送で使う言葉についての詳細が載っている『NHKことばのハンドブック第2版』(NHK出版、2005年)を開いてみました。
「『雨もよう』『荒れもよう』は『~となりそうな状態』のときに用いるのが本来の用法であるが、すでに小雨が降っていたり、天候がやや荒れていたりする場合にも、『雨もよう』『荒れもよう』を使うことがある。その場合は、雨や嵐の様子など、具体的な記述を加えるよう心がける」とありました。条件は付いていますが、2005年時点で後者が既に許容されていたとは…。ただ、その上で次のように書かれていました。「意味があいまいで解釈が分かれる表現なので、天気を予報する場合には使わない。」
正確さを求める場合と、そうでない場合との使い分け。この辺りが、使う際の判断基準となりそうですね。
とはいえ、放送で言葉を扱う私たちは、本来の意味をわかった上で使う必要があります。改めて、こうした言い回しには注意せねばならない、と思う今日この頃です。
言葉は時代とともに、その意味も使い方も変化します。「ことばコトバ」では、こうした言葉の楽しさを紹介していきます。
(「ことばコトバ」第37回 ラジオ関西アナウンサー・林 真一郎)