神戸市西区の路上で2021年5月、妻(当時81)を刺殺したとして殺人・銃刀法違反罪に問われた夫(80)の裁判員裁判で、神戸地裁は20日、懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡した(求刑・懲役5年)。
夫は「介護に疲れ、妻の同意を得ていた」と起訴内容の一部を否認、承諾殺人罪の成立を主張していた。裁判の争点は、妻が殺害を承諾していたかがだった。
夫は5月18日夜、神戸市西区の路上に止めた乗用車内で、妻の首や胸などを自宅から持ち出した包丁で複数回刺し、殺害したとされる。
判決で神戸地裁は、妻ががんなどを患って精神的に不安定になり、被告も長年の献身的な介護から疲弊し、先の見えない介護生活に失望していた点は「同情の余地がある」とした。妻の「あなたが一緒に死んでくれるなら、私も死ぬ」という言葉で、夫は心中を決意したとの主張を受け入れ、承諾殺人罪の成立を認めた。そのうえで、本人が犯行を本心から悔いていることや、高齢であることから服役時の身体面での不安、長男・長女が今後の生活を支えることなどを踏まえ、「直ちに実刑に処すべきではない」と判断した。
裁判長は最後に「今後は、社会生活の中で反省と(妻の)冥福を祈る日々を送ってほしい」と諭した。