神戸市兵庫区のビルで2019年、エレベーターの保守点検中の男性が機械に挟まれ死亡する事故があり、兵庫県尼崎市に居住する遺族が27日、勤務先だった日立ビルシステム(本社・東京都千代田区)や当時の同僚男性を相手取り、安全配慮義務を怠ったなどとして計約1億6千万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴した。
訴状などによると、2019年2月15日、神戸市兵庫区のビルでエレベーターの定期検査のため保守点検員の男性(当時48)が昇降路内にいた際、一緒に作業していた同僚の20代男性が、かごを高速で上昇させる運転を行っていた。その時、バランスを取るために滑車を介して吊り下げられている重りが下降し、かごとの間に挟まれて死亡した。
兵庫県警が2021年、業務上過失致死容疑で同僚の男性を書類送検したが、神戸地検が嫌疑不十分で不起訴処分とした。事故は2020年に神戸東労働基準監督署が労災認定した。
提訴後、神戸市内で記者会見した遺族は、事故に遭った保守点検員側の相談の場が十分になかったと「全国で同じような労災事故が続いている。この裁判を機に、同じ思いをした人が声を上げられるよう、グレーな体質の業界が変わることを望む」と話した。
日立ビルシステムは「訴状が届いていないので、コメントできない」としている。